戦争のない世界平和へ! 平和憲法を生かし、憲法九条改悪に反対する署名運動京都実行委員会

新版 国民投票法案 学習会レジメ

2006年4月28日  岩佐英夫

一、 国民投票法の「根拠」 憲法96条 

@ この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
A 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちに公布する。

二、国民投票法案をめぐる動き

1953年 自治省が「日本国憲法改正国民投票法案」作成(国会提出はされず)
01.11.16 「憲法調査推進議員連盟」(自民・民主・公明・無所属の改憲派議員247名で構成)の「日本国憲法改正国民投票法案」(「議連案」)、「国会法の一部を改正する法律」案を発表
04.12.03 自民・公明が上記「議連案」に若干の修正合意「日本国憲法改正国民投票法案骨子(案)」(「旧与党案」)。民主党も協議に参加。05年11月~06年1月ないし2月に成立を目標(中山太郎衆院憲法調査会会長)→遅れ

【2005年】
01.18 日本経団連:「わが国の基本問題を考える〜これからの日本を展望して〜」発表:「存在する自衛隊」から国際貢献のために幅広く「機能する自衛隊」へ変革。9条1項は存置。2項 自衛権を行使する組織として自衛隊の保持を明確にし、わが国の主権・平和・独立を守る任務を果すとともに、国際平和に寄与する活動に貢献・協力できる旨を明示すべし。自衛隊の海外派遣の活動内容・範囲を明確にする一般法を整備すべし。集団的自衛権が行使できることを憲法上明記すべし。改正要件の緩和、まず国民投票法の早期成立が不可欠。
01.21 「世界平和研究所」(中曽根康弘所長)「憲法改正試案」を発表
02.19 日米安全保障協議委員会(2プラス2)台湾にも言及
04.04 自民党新憲法起草委員会「新憲法起草委員会要綱」発表
04.15 衆議院憲法調査会 最終報告書を決定
04.20 参議院憲法調査会 最終報告書を決定
04.25 民主党憲法調査会 「憲法提言への論点整理」:「歴史・伝統・文化の記述」「制約された自衛権」「国連主導の集団安全保障に参加」「憲法改正国民投票法制に係る論点とりまとめ案」(「とりまとめ案」)発表
08.01 自民党 改憲第一次案を発表
09.11 総選挙 自公合計327(自296・公31)、民主113、共産9、社民7、国民新党4、新党日本1、諸派1、無所属18(内、郵政反対13):改憲派84%
10.12 自民党 改憲第二次案(「加憲」を追加)を発表
10.27 民主党憲法調査会 改憲発議のための手続法案大綱(憲法調査会の「後継機関」として常設の憲法調査委員会の設置を公式に提案、同委員会の任務は「憲法改正案の原案の審査及び起草」)「国民投票法案大綱」を了承(@投票方式:○をつける、白紙・余事記載も反対票と扱う、A内容的まとまり毎に投票)(「民主党案」)
10.28 自民党「新憲法草案」を決定
10.29 日米安全保障協議委員会(2プラス2):米軍再編「中間報告」“日米同盟「未来のための変革と再編」”
12.20 衆院憲法調査特別委員会の自民・民主・公明三党理事会談:06年通常国会に「国民投票法案」を共同提出することで合意。但し参議院では慎重な姿勢(「特別委員会」の設置もまだ)

【2006年】
04.12 自民党憲法調査会:04.12の「旧与党案」をもとに、自公民3党の非公式折衝で一致した点を盛り込んだ「日本国憲法の改正手続に関する法律案・骨子素案」(「新自民党案」)
04.18 自民・公明与党協議会実務者会議:「新自民党案」を一部修正して大筋了承
(「新与党案」)
04.28 教育基本法改悪案を閣議決定、国会提出

三、「国会の立法不作為状態の解消」という「必要論」について

*「国会の怠慢」というが、25条(生存権)、26条(義務教育費の無償)、27条(働く権利)等、「国会の怠慢」は無数にあり:例ハンセン氏病の隔離政策の放置
*現在、このような意味での、国民の側からの「必要性」は何ら存在しない。
国民の8割は現憲法が「戦後の日本の平和維持や国民生活の向上に」「役立った」と回答している(05.10.5「毎日」、06.3.5「毎日」)
*現段階では、憲法9条を中心とする改悪への「外堀」を埋めるものでしかない。
これまでも「国民投票法」の動きがあったのは改憲の動きが強まったとき。国民の改憲反対の運動の発展とともに、国民投票法も立ち消えになっている歴史。
*日本国憲法の民主的条項を徹底的に実践し、それでもどうしても解決困難な問題が生じて、本当に改憲が必要になったときに、真に民主的な国民投票法案を検討すればよい。
*憲法の条文上も「あらかじめ」国民投票の手続を定めておくようにはなっていない。
*フランスの2000年の憲法改正(大統領の任期を7年→5年)の際の手続は、この改正だけのための個別法で処理している。

四、「民主党案は、よりまし」論にごまかされてはならない
      → 狙いは9条改憲


*「民主党案」自体だけを見れば、「新与党案」より優れているのは事実である。
しかしながら、現時点の最大の争点は「国民投票法案」の内容の比較ではなく、「海外でアメリカと一緒に戦争をする国」にするための9条改悪であることを明確にすべき。どんなに「よりよい国民投票法」でも、9条改悪のために使われることに変わりはない。(大きな反対運動の結果として、運動の政治力学として、法案の「歯止め」がかかるということはあるかも知れないが、それはあくまで結果論であり、最初から「よりまし論」にすがるべきではない)

◆9条改憲のための「国民投票法案」であることは明らか
*自民党「新憲法草案」(05.11)は「自衛軍の保持」を明記、共謀罪・教育基本法・米軍再編等、憲法9条改悪の環境づくり・先取り
*05.4.25日発表した民主党「憲法提言」では、自衛権を憲法上明確に位置づけ、「国連主導の集団安全保障活動への参加を明確に規定する」としている。9条1項を残すとしても2項はどうするのか、3項を加えるのか、あるいは「安全保障基本法」の内容はどうなるのか不明。いずれにしても、自衛隊を憲法上明確に位置づけること、「国連主導の集団安全保障活動への参加」、「安全保障基本法」で、結局海外での自衛隊の武力行使を認める方向は明らかであり、民主党の国民投票法案も9条改憲のためであることに変わりはない。なお、現在のイラクの「多国籍軍」は国連容認のもとに行われていることに注意(安保理決議1546号、同1637号等)。
*民主党 前原党首(当時)05.12 米国での講演 集団的自衛権の行使を明言
*06年2月26日 公開討論会(大阪)での発言
・「憲法改正がもう目の前に来ている。その中で手続法を整備する大きな責任がある」(船田元・自民党憲法調査会長)
・「改憲内容の議論は詰められてきており、タイムリミットは近い」(枝野幸男・民主党憲法調査会長)
・「九条を最大の論点として加憲論議を進めているが、その筋道を定めるべく早期に成立させたい」(斉藤鉄夫公明党衆議院議員)

◆与党は、「国民投票法案」成立のためには、民主党に大きく譲歩するつもり
*「与党案は参考資料の一つとして議論の俎上に載せていただきたいと思っている。これにこだわるつもりは全くなく、取れるところは取り、捨てるべきところは捨てて、建設的な議論をしたい。」(06.03.09 衆院憲法調査特別委員会 保岡興治発言)
*後述のように投票方式、メディア規制等も、かなり民主党案に近寄る。

五、「新自民党案」(「新与党案」)と「民主党案」の対比・問題点

1、国民投票法案の対象範囲
新自民党案:今回は、憲法改正国民投票に限定すべき 第1
民主党案 :憲法改正に限らず皇室制度、家族制度、生命倫理など国民の重大な関心事・政策テーマについても国民投票を行なう。 第五の一
*しかし、その「結果は国及びその機関を拘束しない」としている。 第五の二
結局、国民の人気取りに過ぎない。

2、発議・国民投票の方式が条文ごとか、一括提案か
新自民党案
「憲法改正案ごとに」1人1票 第5の1
投票用紙:「発議にかかる議案ごとに調整」 第5の3
憲法改正案の提出:内容的に関連する議案ごとに区分して行うように 努めなければならない」 第13の1(2)
民主党案 :
投票用紙:議案ごとに調整 第四の三、1
憲法改正案の提出:内容的なまとまりごとに、それぞれ一の議案として議決する 
国会法大綱第三の一、2

(注)*一括投票方式の場合は、善意で「加憲論」に惑わされている人は悩んで棄権する可能性がある → 憲法9条改悪に有利な結果を招く
*05年5月3日「朝日」世論調査でも、「一括して賛否を問う」24%、「テーマ毎に個別に」69%となっており、圧倒的多数がテーマ毎の投票方式を求めている。
*05.4.25の民主党「とりまとめ」案は、「書替改訂方式」(溶け込み方式、逐条改正方式が前提)で、「個別投票方式を原則」としている。しかしながら、結局、「国会がどのような形式で憲法改正案を発議するかにもよる」としている。

3、投票方式
新自民党案:賛成は○、反対は× 第5の4
民主党案 :○をつける、白紙・余事記載も反対票と扱う 第四の四

4、憲法96条の「過半数の賛成」の成立要件
新自民党案:有効投票総数の2分の1 第9の1
民主党案 :投票総数の2分の1 第四の五1

(注)*本来「過半数の賛成」の成立要件としては、次の3段階があり得るはず
@有権者総数の過半数(棄権者も「改憲賛成でない」として考慮)
キューバ、ザンビア、ウガンダ等
A投票総数の過半数(白紙等の無効投票も「改憲賛成でない」として考慮)
B有効投票の過半数(棄権、白紙等は無視)

5、最低投票率制度の問題
新自民党案:導入せずと明記 第9の1
民主党案 :導入せず(規定なし)
*最低投票率の問題は「引き続き検討」としている。

(注)*棄権・ボイコットが多いと不成立。反対票を投ずるべきか、ボイコットすべきかの論争。最低投票率を定める国は32ケ国。デンマークは「総投票の過半数かつ有権者の40%以上の賛成」

6、国会発議から国民投票までの期日
新自民党案:「60日〜180日」(旧与党案 30日〜90日)第2の1(1)
民主党案 :「60日〜180日以内」 第四、一

(注)*改憲という重大問題は徹底した国民的論議が必要なのに、これでは短じかすぎる。国家の根本規範である憲法を改正するのに、60日は勿論、180日でも不充分。
ex.月刊誌が特集しようとして、原稿依頼、執筆、印刷等の時間、国民の間での学習会、シンポ等充分な論議の時間が保障さるべき

7、「国民投票運動」に対する規制
@、特定公務員の国民投票運動禁止(参照:公選法135条1項・88条、135条2項、136条)
新自民党案:禁止  
第7の1(1)(投票管理者、開票管理者:在職中・関係区域内)
第7の1(2)(選挙管理委員会委員及び職員、裁判官、検察官、警察官、会計検査官、徴税官吏:在職中)
民主党案 :禁止 第八(但し、新自民党案のうち、在職中の裁判官、検察官、警察官、会計検査員、徴税官吏の運動は制限していない)

(注)*これらの職員も職務外では政治活動は自由であるべき

A、公務員・教員の地位利用による国民投票運動禁止(参照:公選法136条の二、137条)
新自民党案:禁止  第7の2、3
民主党案 :規制なし 第八
*職務時間外まで規制するのは問題。教員の教育の自由も制限
*現在の公選法でも「選挙運動」は規制しているが「政治活動」は対象外(但し、国家公務員法、人事院規則、教育公務員特例法による制限。それでも地方公務員の現業等は相当の自由がある)。公選法運用の実態は「実際に地位を利用して投票の公正を害」しているか否かにかかわり無く弾圧している。

B、外国人の国民投票運動禁止
新自民党案:条件つき禁止  第7の4
組織的な運動や投票行動に重大な影響を及ぼすおそれのある運動をすることができない(旧与党案は、寄付を含め全ての運動禁止。その意味では、緩和)
民主党案 :規制なし 第八
(注)*外国人に対する全面的な運動禁止は、公選法には全く規定されてない。

C、メディアへの規制
新自民党案:
1)虚偽事項報道・歪曲報道:「自主的な取組み」 第7の6 
→4月18日案(「新与党案」)では、この部分も削除!
2)投票期日前7日間は放送による広告は禁止 第7の7
3)政党等によるテレビジョン放送及び新聞広告 第7の8
4)国民投票の予想公表の禁止(参照:公選法138条の三):第7には明示なし。(「議連案」「旧与党案」は報道を厳しく制限しており、予想投票の公表禁止を罰則付きで規定)
民主党案 :規制なし 第八

(注)*「旧与党案」では、新聞・雑誌の虚偽報道等の禁止・処罰(参照:公選法148条1項):・「虚偽の事実を記載し、又は事実をゆがめて記載」
・自民党改憲草案の前文や9条に関して「徴兵制導入のおそれ」と記載したら「事実をゆがめ」に該当するのか?(草案には「徴兵制」の明記なし、「大綱」は徴兵制は導入しない旨コメント)
*新聞・雑誌の不法利用等の禁止・処罰(参照:公選法148条の二)
・「編集者の地位を利用して」とは何か?“私的な立場からその地位を不当に利用して”(改憲議運案の説明) → 「改憲に対する個人的信念」を含む危険。
*放送事業者の虚偽報道等の禁止・処罰(参照:公選法151条の五)

D、戸別訪問の禁止・飲食物の提供の禁止
新自民党案:第7には規制はない。しかし、第8、罰則の「買収罪」「国民投票の自由妨害罪」のような形で規制は可能?
民主党案 :明文規定なし 第八の九

E、公選法では選挙期間中「政治団体」の政治活動について、機関紙・ビラを含め厳しい規制があるが、「国民投票法案」では、この点の規制は、いまのところなし。
*しかしながら、ビラまき等に対して、住居侵入、国家公務員法違反等で次々と弾圧している警察・検察の動き、共謀罪の動き

8、発案・修正動議の議員数の要件
新自民党案:国会議員のみ。衆議員100人以上、参議員は50人以上 
第13の1(1) 少数政党の意見排除
民主党案 :「国会議員」(最低必要人数は未定)のほかに、「国民による発案」も認める
国会法大綱第一の一、二

9、投票権者
新自民党案:20歳以上の国民(国会議員の選挙の有権者) 第2の2
民主党案 :18歳以上の日本国民  第一の二
【3ケ月居住要件】
新自民党案:維持 第4の2
民主党案 :不要 第一の五2

10、憲法改正案の周知・広報担当者
新自民党案:「憲法改正案広報協議会」(各議院から選任された同数の議員で構成。各会派の所属議員数をふまえて各会派に割り当てて選任)第13の4
民主党案 :「国民投票委員会」(衆参6人の議員で構成。反対派議員からも委員選出を義務づけ) 第一の三

11、罰則

@投票干渉罪・投票箱開披罪・詐欺投票罪
新自民党案:規制あり 第8
民主党案 :規制あり 第九

A買収罪
新自民党案:規制あり 第8
民主党案 :規制なし 第九

B投票の自由・平穏を害する罪の是非
新自民党案:規制あり 第8
民主党案 :規制あり(投票干渉罪・投票内容認知罪) 第九

(注)*民主党「とりまとめ案」:
@、@「規制ゼロ」から考える A「プレスの自由」は特に保障 B刑法・国家公務員法等他の法律に刑事制裁が規程されている行為類型については、新たに罰則をもうけない、としている。
規制・罰則をもうけるべきと想定されるのは8類型
A.外国人の国民投票運動の自由(意見表明権)は、公共の福祉に反する場合を除き、可及的に保障されるべきである。
*しかしながら、この民主党案でも、国家公務員法、人事院規則、教育公務員特例法による厳しい政治活動禁止は残ることになる。しかも、05年4月6日、自民党は地方公務員法や教育公務員特例法、地方公営企業法、地公労法、地方独立行政法人法、政治資金規正法等の改悪案を発表し、すべて国家公務員なみの厳しい政治活動禁止をしようとしている。
                                    以 上

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