戦争のない世界平和へ! 平和憲法を生かし、憲法九条改悪に反対する署名運動京都実行委員会

「改憲手続法案(国民投票法案)」の危険なカラクリ

2007年1月19日      弁護士 岩佐英夫

PDF版《「改憲手続法案」のからくり》および《与党案・民主党案と「修正案」》はここをクリック

一、はじめに・緊迫する情勢:明示された改憲勢力のロードマップ

06.05.26 自・公「改憲手続法案」(国民投票法案)を共同で164回通常国会に提出
  同日、民主党も法案を提出。      
06.06.01 審議入り → 06.06.18 継続審議に
06.10.26 臨時国会で審議入り → 継続審議
06.12.15 教育基本法改悪(12月22日公布・施行)・防衛庁の「省」昇格・自衛隊の海外派遣の本来任務化
        (12月22日公布、07年1月9日施行)
07.01.04 安倍首相の年頭記者会見:“改憲を参議院選挙の争点に”
07.01.12 中川秀直自民党幹事長:“憲法記念日までに必ず成立させる”

本年の通常国会(07年1月25日召集・6月23日まで)の最大の課題は「改憲手続法」(改憲手続法案)の成立を阻止できるか否か。

改憲派は国民投票で「必ず勝つ」ためのさまざまの「カラクリ」を改憲手続法案に盛り込んでいる。この改憲手続法の成立を許せば、数年後にも予測される改憲国民投票において、「護憲派」は極めて困難な状況に追い込まれる。

自民・公明の案と民主の案は9割一致。「いざ、国民投票になって頑張れば改憲を阻止できる」という考えは幻想。

改憲手続法案が戦後はじめて国会に提出されたことの重大性。

これが国会を通過すると雪崩のように改憲への政治日程に踏み込んで行く。

二、「国会の立法不作為状態の解消」という「必要論」について

安倍新内閣に期待するもの:憲法「改正」は、2〜3%しかない。
そんなことより「格差社会」の解消、福祉・教育の充実、大増税反対等こそ、圧倒的多数の国民の声
*「国会の怠慢」というが、25条(生存権)、26条(義務教育費の無償)、27条(働く権利)等、「国会の怠慢」は無数にあり:例ハンセン氏病の隔離政策の放置

現在、このような意味での、国民の側からの「必要性」は何ら存在しない。
国民の8割は現憲法が「戦後の日本の平和維持や国民生活の向上に」「役立った」と回答している(05.10.5「毎日」、06.3.5「毎日」)

現段階では、憲法9条を中心とする改悪への「外堀」を埋めるものでしかない。
これまでも「改憲手続法」の動きがあったのは改憲の動きが強まったとき。国民の改憲反対の運動の発展とともに、改憲手続法も立ち消えになっている歴史。

日本国憲法の民主的条項を徹底的に実践し、それでもどうしても解決困難な問題が生じて、本当に改憲が必要になったときに、真に民主的な改憲手続法案を検討すればよい。

三、「民主党案“よりまし”論」は落とし穴

1、与党案も民主党案も狙いは同じ:9条改悪

改憲手続法案の「民主党案」自体だけを見れば、「新与党案」よりいくつかの点で多少ましなのは事実。しかし、現時点の最大の争点は「改憲手続法案」の内容の比較ではなく、「海外でアメリカと一緒に戦争をする国」にするための9条改悪であることを明確にすべき。どんなに「“よりまし”な改憲手続法」でも、9条改悪のために使われることに変わりはない。

◆9条改憲のための「改憲手続法案」であることは明らか

自民党「新憲法草案」(05.11)は「自衛軍の保持」を明記。米軍再編・教育基本法・共謀罪等、憲法9条改悪の環境づくり・先取り

05.4.25日発表の民主党「憲法提言」では、自衛権を憲法上明確に位置づけ、「国連主導の集団安全保障活動への参加を明確に規定する」としている。9条1項を残すとしても2項はどうするのか、3項を加えるのか、あるいは「安全保障基本法」の内容はどうなるのか不明。いずれにしても、自衛隊を憲法上明確に位置づけること、「国連主導の集団安全保障活動への参加」、「安全保障基本法」で、結局海外での自衛隊の武力行使を認める方向は明らかであり、民主党の改憲手続法案も9条改憲のためであることに変わりはない。なお、現在のイラクの「多国籍軍」は国連容認のもとに行われていることに注意(安保理決議1546号、同1637号等)。

 イラク特措法も冒頭に安保理決議を並べて自衛隊派遣の口実にしている(実際には、アメリカの武力行使を容認する安保理決議は存在しないにもかかわらず)

民主党 前原党首(当時)05.12米国での講演:集団的自衛権の行使を明言

06年2月26日 公開討論会(大阪)での発言

・「憲法改正がもう目の前に来ている。その中で手続法を整備する大きな責任がある」(船田元・自民党憲法調査会長)
・「改憲内容の議論は詰められてきており、タイムリミットは近い」(枝野幸男・民主党憲法調査会長)
・「九条を最大の論点として加憲論議を進めているが、その筋道を定めるべく早期に成立させたい」(斉藤鉄夫公明党衆議院議員)

◆与党は、「改憲手続法案」成立のためには、民主党に大きく譲歩するつもり

「与党案は参考資料の一つとして議論の俎上に載せていただきたいと思っている。これにこだわるつもりは全くなく、取れるところは取り、捨てるべきところは捨てて、建設的な議論をしたい。」(06.03.09 衆院憲法調査特別委員会 保岡興治発言)
後述のように投票方式、メディア規制等も、かなり民主党案に近寄る。
「与党案と民主党案では違いはほとんどない」(06.6.1衆院本会議 自民党甘利明議員)
「これは対決法案ではない。両案のちがいはわずか。」(自民・船田元議員)
「与野党一致で成立をめざすことは全く同感」(民主・小川 淳也議員:提案者の1人)
「共謀罪」法案に見られた与党の「民主党案の丸呑み」劇を見よ!!

2、九条改悪はアメリカの押し付けと財界の要求

@、憲法改悪はアメリカの指図:(「押付け憲法論」への最大の反論)


00.10.11 アーミテージ報告:集団的自衛権の行使、有事法制制定促す。
01. 5.15 ランド研究所(米空軍シンクタンク)報告:「日本が領土防衛を超えて安全保障範囲を拡大し、共同作戦支援の作戦適切な能力を獲得できるよう改憲努力を支持すべきだ。」と改憲を明言。 
04.3月号「文芸春秋」:「憲法9条は日米同盟の邪魔者だ」(アーミテージ)
04.7.21 アーミテージ:「憲法9条は日米同盟の妨げ」、「日本の国連安保理常任理事国入りを強く支持」「常任理事国は国際的利益のために軍事力を展開しなければならない役割がある」集団的自衛権行使の問題は「サンフランシスコ条約や国連憲章に署名した時、日本国民は集団的自衛権行使を承認したのだと思う」 訪米中の中川秀直自民党国対委員長との会談で
04.8.12 パウエル「日本が安保理常任理事国に入るには憲法9条の再検討が必要」
*米軍の世界戦略再編との関係

A、財界の要求

【日本経団連】
05.01.18 「わが国の基本問題を考える〜これからの日本を展望して〜」発表
「存在する自衛隊」から国際貢献のために幅広く「機能する自衛隊」へ変革
9条1項は存置。 2項 自衛権を行使する組織として自衛隊の保持を明確にし、わが国の主権・平和・独立を守る任務を果すとともに、国際平和に寄与する活動に貢献・協力できる旨を明示すべし。自衛隊の海外派遣の活動内容・範囲を明確にする一般法を整備すべし。集団的自衛権が行使できることを憲法上明記すべし 同報告20頁
改正要件の緩和、まず国民投票法の早期成立が不可欠 同22頁

【日本商工会議所】
05.06.16「憲法改正についての最終報告」を発表:9条1項は維持、2項改定(自衛権と「戦力の保持」を明記)、3項を新設(自衛隊の海外派遣を認め、本来業務に位置づける)。「集団的自衛権」については「自衛権に含まれるのが国際法上の常識」と指摘。憲法への明記は求めず、行使の範囲や手続などを条約や法律で定めるべし。

四 改憲手続法案の内容と問題点:「修正案」も本質は変わらない

◇ 対象:  与党案:改憲のみ 、 民主党案:国政問題も含む

 修正案 別紙

◇ 投票権者 第3条
与党案  :20歳以上の日本国民(国会議員の選挙の有権者) 
民主党案 :18歳以上の日本国民(案件毎に国会の議決により16才以上も可能)
 
 *修正案 別紙「改憲手続法案 与党案・民主党案と『修正案』」(自由法曹団作成)

1 改憲手続法案の「カラクリ」(1)

  
改憲派情報だけが広がる3重の仕組み

*憲法96条の趣旨

衆議院と参議院のそれぞれの総議員の3分の2以上の賛成で議決された改憲案について、改めて国民投票での「過半数の賛成」を要求。即ち、憲法改正については、国会の多数意思で決めることはできず、国民自身の直接的判断を優越させる
憲法が国のあり方をきめる根本最高法規である以上、主権者である国民の意思を最大限に尊重するのが民主主義国家として当然。

→国民自身が改憲案の内容を十分に理解して、賛否の投票ができるように、国民に十分な議論と運動、熟慮のための資料・時間と機会を保障することが重要。

@、「広報協議会」:
与党案(第11条〜第20条)、民主党案(第11条〜20条)(名称が「国民投票広報協議会」となっている以外は、殆ど与党案と同じ。)

憲法改正案の広報に関する事務を担う「広報協議会」を国会に設置
構成:衆議院と参議院から各10人、合計20人の委員(第12条)
各会派の所属議員数の比率により、各会派に割り当て(12条3項)。
一応、比例配分で反対会派がゼロの場合も割当するよう「配慮」となっているが、
  →委員の圧倒的多数は改憲派に。
  現状では共産党、社民党など護憲派からは、せいぜい1〜2名が入るに過ぎない。
「広報協議会」の事務:第14条
・「国民投票公報」の作成
憲法改正案並びに要旨、解説、発議のときの賛成意見・反対意見を掲載
  →改憲派に有利な公報がつくられることは確実
・説明会の開催
・その他の広報

A、国費でのテレビ、ラジオ、新聞の無料意見広告(第107条)

マスコミの選挙報道の影響力の大きさ:昨年9月の郵政解散選挙で経験済み
法案は、政党等が、無料で(国が費用負担)、憲法改正案に対する意見を、
  @NHK及び民間放送局のテレビ、ラジオで放送することができる。(107条1項)
  A新聞に意見広告をすることができる。(107条5項)
テレビ、ラジオの放送時間数、新聞の寸法と回数は、広報協議会が「議員の数を踏まえて」、つまり議席数に比例させて決める(107条3項、5項)
利用できるのは「政党等」のみ。学識者、各界・各層の幅広い団体・市民も、賛成意見も反対意見も、同等に無料広報ができる工夫をすべし(日弁連意見書5頁)

与党「修正案」では、賛成・反対とも同一の時間数及び同等の時間帯を与える。また「政党等」は、その放送の一部をその指名する団体に行わせることができる。
民主党修正案も同様。

B、マスメディアの有料広告:財界・大政党の財力による支配可能

与党・民主両法案ともAの他に、有料での一般及び有線のテレビ・ラジオによる広告放送ができる。但し投票期日前7日間のみ禁止(第106条) 
新聞広告も認める。(禁止規定がないので可能)
→資金力豊かな改憲派の大政党、経団連等の経済団体や独占大企業などが金にあかして大量のテレビのスポット広告などを垂れ流すことは確実
現在ですら毎日のように自民党や民主党はテレビ広告を展開:これらは政党助成金を使用。財界・大政党の財力による支配可能。フランスでは国民投票での商業宣伝が禁止
与党・民主党の修正案 別紙
与党・民主党の「折衷案」:禁止期間が「7日間」から「14日間」になっただけ。問題点の本質は全く変わらない。
マスコミは、殆ど批判しない。∵広告収入の関係。

第2 改憲手続法案の「カラクリ」(2)

  国民投票運動への規制で『萎縮効果』をねらう


与党の「改憲手続法案」では、国民の「自由かつ十分な投票運動」を侵害する仕組みがいくつも盛り込まれている。世界に例を見ないほど規制が多く「べからず選挙」と批判されている公職選挙法の運動規制の多くを、そのまま国民投票運動の規制にも導入しようとしている。
古くから国民投票制度を利用している欧州では、主権者である国民の投票運動への規制はほとんどない。

1、公務員等の国民投票運動禁止

@、国家公務員、地方公務員、教育者に対し「地位利用による国民投票運動を禁止」

(特定独立行政法人・特定地方独立行政法人・日本郵政公社の役員または職員、公庫の役職員を含む。) 第104条

A、教育者(学校長及び教員・私立も含む):第105条
「児童・生徒・学生に対する教育上の地位利用による国民投票運動を禁止」

B、問題点/

@・A合わせて対象者は約500万人にものぼる。違反者には刑罰を予定。

「国民投票運動」(102条「憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する行為」)は、「選挙運動」(「特定の候補者や政党に得票を得させ、又は得させないことを目的とする運動」)に比べて、はるかに広く曖昧な概念

→実際には改憲について話すこと、行動することのすべてが「運動」とみなされかねない。「地位利用」かどうかも権力の認定でどうにでも濫用される危険が強い
*しかるべき対象者を選んで数人程度でも「見せしめ的」に弾圧すれば、500万人の人々の改憲反対運動を「萎縮」させることは十分に可能

【公務員や教育者の「中立性」】は規制の正当理由にはならない
中立性の確保が目的ではない。「中立性」をいうのであれば、本来中立性が最も求められる選挙管理員会の委員・職員や警察官などの違反(禁錮6か月以下)よりも、教育者(禁錮1年以下)や公務員(禁錮2年以下)の違反の方が重い刑罰となっていることは説明できない。改憲反対勢力の中でも有力な労働組合を含む公務員・教育者に的をしぼった運動規制が目的。改憲勢力が公務員や教育者の改憲反対運動をいかに恐れているかの現れとみるべき。

与党・民主党の「折衷案」について
一応、罰則をはずす(国民投票運動や意見の表明については、国家公務員法・地方公務員法の政治的行為の制限については適用しないとしている)
 ・“「罰則」をなくした“というが、「行政処分」で脅し。これで充分な「萎縮」効果
 ・そもそも、従来から住居侵入罪や国家公務員法違反による弾圧。与党も民主党も、この不当弾圧には口をつぐんでいる。

2、「組織的多数人買収及び利害誘導罪」:第109条 

3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金
どういう行為が犯罪になるのか(構成要件)が非常にあいまい。
“組織により”の意味は?
例えば労働組合が大会で「改憲反対決議」をあげて反対運動に組織的に取り組むことを決定し、大会終了後に、組合が全部または一部の費用を負担して組合員が親睦を深めたような場合にも、警察からこの犯罪にあたると弾圧を受ける危険性あり

修正案 「積極的に勧誘」に限定

第3 改憲手続法案の「カラクリ」(3)

     わずかの賛成で憲法改悪を企む


改憲のための国民投票は、国民の「過半数の賛成」で承認される(憲法96条)
与党の改憲手続法案は、改憲派絶対有利の国民投票運動についての「カラクリ」の他にも、「改憲ハードル」を低くする「カラクリ」を用意 

◇投票方式

与党案  :賛成は○、反対は× (白票は無効:06.5.19「大綱」)
民主党案 :○をつける、白紙・余事記載も反対票と扱う 

与党案では、○か×を投票用紙に書くことが必要で、「白票」は無効票。○か×の他に何か書いたもの、例えば○でなく「賛成」、×でなく「反対」と書いても無効。
無効票をできるだけ多くして「有効投票」の過半数のハードルを低くする。

双方の修正案:別紙

◇憲法96条の「過半数の賛成」の成立要件

与党案  :有効投票総数の2分の1 
民主党案 :投票総数の2分の1 

本来「過半数の賛成」の意味として、次の3段階あり。@ABの順に厳しい要件
@有権者総数の過半数(棄権者も「改憲賛成でない」として扱う)
 キューバ、ザンビア、ウガンダ等
A投票総数の過半数(白紙等の無効投票も「改憲賛成でない」として扱う)
B有効投票の過半数(棄権、白紙等は無視してしまう)

「与党案」だと、実際には有権者の過半数を大きく割り込む少数の賛成しかないのに改憲が実現してしまうことがありうる。
・例えば、投票率が50%だった場合、無効票が20%(有効投票率80%)だとしたら、全体の20%(50×0・8÷2=20)余りの賛成で改憲案は成立
投票率が60%としても24%余りで改憲案は成立
・民主党案は「投票総数の過半数」としており、与党案よりはましだが、「最低投票率」を定めていない点は与党案と同じで、上記の例では25%余り、30%余りの賛成で改憲成立となり、大差はない

明確に反対票を投じた人だけでなく、投票所に行かなかった人、行ったけれど迷って白票を投じた人を含めて、有権者の過半数の人が、場合によっては有権者の80%、76%の人が「改憲に賛成しなかった」のに、改憲が実現してしまう
こんな手続法では、憲法96条が予定している主権者国民の意思を直接問うための国民投票制度とは到底いえないことは明らか

憲法「改正」の重大性からすれば、「有効投票」や「投票総数」を基準にするのではなく、「改憲賛成の明確な投票をした人」が「有権者総数の過半数」に達した場合にのみ改憲についての国民の承認があったとすべき。少なくとも「投票総数の過半数」にすべき(日弁連意見書7頁)。

与党案・民主党案とも、「最低投票率」「絶対得票率」の制度を採用せず。

棄権・ボイコットが多いと不成立。反対票を投ずるべきか、ボイコットすべきかの論争。最低投票率を定める国は32ケ国。

有効投票の過半数としている国でも、「最低投票率」をきちんと定めて、一定の投票数がない限り国民投票自体が成立しないとしていたり、「絶対得票率」(全有権者比で改憲に必要とされる得票率)を定めている国が多い。

イギリス:総投票数の過半数で、かつ、「絶対得票率」として全有権者の40%以上の賛成。

デンマークは「総投票の過半数かつ有権者の40%以上の賛成」。
即ち、投票率50%なら、投票総数の80%余りが賛成でなければ改憲案は成立しないことになる。

憲法「改正」という重大問題には「最低投票率制度」及び「絶対得票率制度」を導入すべき。“賛成は少なくとも「投票総数の過半数」、「最低投票率」は有権者の3分の2以上に”(即ち有権者の3分の1以上の賛成がなければ改憲が成立しない)(日弁連意見書7頁)

*双方の修正案:別紙
                    
第4 改憲手続法案の「カラクリ」(4)
  「十分な検討、熟慮」を認めない・短じかすぎる運動期間


改憲案の国会発議(両議院で各3分の2以上の特別多数で可決された時)から国民投票までの期日:「60日〜180日」で、国会が決議して定めた日を国民投票日としている。第2条 (民主党案も同一)
従来の従来の憲法調査推進議員連盟案や与党協議会の骨子案では「30日以降90日以内」としていたのに対し、短かすぎると批判が集中したことを受けて手直し

しかし、改憲という重大問題は徹底した国民的論議が必要なのに、これでも短じかすぎる。

日弁連意見書(6頁)は最低でも1年間を要求。
 国民自らが様々な運動を行うことも想定。改憲案批判のビラやパンフレットを作り、配るだけでも相当な時間がかかる。大小の集会を持つために会場を借りるだけでも数ヶ月必要。1人ひとりの国民が草の根の地域や職場で他の人々と話し合うにも、多くの時間が必要。充分な活動保障と冷静な判断が必要。

スペインやスウェーデンの憲法では、改憲の発議は、総選挙をはさんで2度、国会によってなされねばならず、スウェーデンでは、最初の発議がなされてから、総選挙が行われるまで9か月が経過することが要求されている。

これとの関係で「国民投票広報」が投票日の30日前までに中央選挙管理会に送付(第19条、従って有権者への配布はさらに後になる)では短かすぎる

修正案でも、変更なし。

第5 改憲手続法案の「カラクリ」(5)
     
     民意を歪める「一括投票」の危険


◇国民投票の方式が条文ごとか、一括提案か

与党案・民主党案ともに
「投票は、国民投票に係る憲法改正案ごとに、一人一票に限る」:第48条
発議は「内容において関連する議案ごとに区分して行う」

「憲法は制定から60年を経過し、古くなった。新しい時代にふさわしい新しい憲法を」などとの改憲キャンペーンの影響を受けて、世論調査では「改憲賛成」と答える国民が多数ということがしばしばある。しかし、9条の改憲については、「反対」と答える人が多数をしめており、一括投票方式の場合は、善意で「加憲論」に惑わされている人は悩んで棄権する可能性がある → 憲法9条改悪に有利な結果を招く

自民党の新憲法草案のような改憲案の場合、“前文から最後までのすべての項目が関連しあって「新たな憲法」を提示している”、「内容において関連する事項」にあたるとして一括して賛否が問われる危険性がある。

 両法案では、100人以上の衆議院議員または50人以上の参議院議員に議院への「憲法改正原案の発議権」(提案権)を認めているが、その改正原案の発議(提案)が(両院で3分の2以上の特別多数の賛成により)そのまま国会の発議する憲法改正案となる可能性がある。改正案の発議者・提案者にとどまる国会側の判断で、個別の条項ごとの国民投票でなく、「関連する事項ごと」に一括して国民投票にかけることが可能となる。

 「内容において関連する事項」というのは、表現がきわめて抽象的で、「関連する事項」の範囲が限りなく広がるおそれがある。「関連する事項」の範囲を、憲法を「改正」しやすいように恣意的に設定される危険がある。国民が判断に迷って、白票を投じると与党案では無効票になり、改憲案成立のハードルがいっそう低くなる。

改憲案全体の是非を問う一括投票制度は、国民の意思を正しく反映させるものとは到底言えず、国民主権の原則に反することは明らか

修正案でも変更なし。

第六 改憲手続法案の「カラクリ」(6)

     改憲原案審議のための「憲法審査会」の設置


「憲法審査会」:与党案・民主党とも全く同じ

@
、従来の「憲法調査会」は「日本国憲法について広範かつ総合的な調査を行う」ことを目的とし、改憲案の審議、作成、提出権などは認められていなかったが、これが一変。

A、「憲法審査会」:

憲法改正原案を審議、作成し、両院本会議に提出する権限を持つ常設機関。国会閉会中の審査も行うこともできる。両院の憲法審査会は、「合同審査会」を開くことができ、憲法改正原案について、各院の憲法審査会に「勧告」することができる。改憲派多数の憲法審査会で改憲原案を審議し、合同審査会で調整する。そこでまとめた案を各院の憲法審査会に勧告して一本化をはかり、これを両院に憲法改正原案として提出するという道筋。
衆参両院の本会議での審議が始まる前に、改憲をめざす各党間で合意が完成してしまっているということになる。

「施行」は、公布から2年後→即ち、憲法「改正」発議はこれ以降。

但し、「憲法審査会」は、公布後の最初の国会召集の日から施行。即ち、法案が成立した国会の次の国会から憲法改悪案の審議が可能で、閉会中審査もできる。2年後の施行後すぐに憲法改悪案の国会発議もありうる。改憲のロードマップが明らかに!

与党・民主党の修正案:施行を3年後に、施行日までの改正原案審査の凍結

第七 阻止の展望

改憲手続法案の内容が、「改憲」=「壊憲」を実現するという動機に貫かれているために、あまりに不公正でひどい内容になっていること──これが改憲勢力の最大の弱点。法案の正体をいち早く学び、これを国民に広く訴えることによって、改憲手続法案の成立を阻止するに足りる世論を呼び起こすことは十分に可能

全国各地で「九条の会」の広がり。全国で5000を超える(06年6月)、京都でも300を超える。

民主党も参議院選挙を気にして、与党との修正合意に躊躇
                                               以 上

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