戦争のない世界平和へ! 平和憲法を生かし、憲法九条改悪に反対する署名運動京都実行委員会

自民党憲法改正草案(たたき台)原文

事務局案(未定稿・H16.11.17)
自民党憲法改正草案(たたき台)原文
〜「己も他もしあわせ」になるための「共生憲法」を目指して〜

はじめに〜基本的考え方〜

 日本国憲法(昭和21年憲法)は、国民主権、基本的人権の尊重及び平和主義の三つをその基本的原理としている。この日本国憲法が、わが国の民主主義国家としての戦後の発展の基礎を再構築する上で非常に大きな役割を果たしてきたことについては、これを高く評価すべきであり、また、この三つの基本的原理については、今後ともこれを発展維持していくべきであることは、ここで改めて再確認しておく必要がある。

*憲法改正を話題にするときに、いまだに見られる「復古的」との誤解を完全に払拭するためにも、又、あくまでも今回の憲法改正が、現行憲法の「発展」であることを明確にするためにも、現行憲法の三つの基本的原理は今後とも堅持すること(厳密にいえば、「平和主義」などについては一部修正を加えて維持するので「発展・維持」と表現)を、冒頭で宣言したもの。

しかし、これらの基本的原理が理念として定着する一方で、これを経済発展至上主義や、極端な利己主義、偏狭な一国平和主義というように誤解するなどさまざまな歪みが露呈してきていることも事実である。そして、日本国憲法施行後、60年近くを経た内外の諸情勢の変化等にかんがみるとき、これからのわが国の進むべき方向性を指し示した新たな国家像を、国家の基本法であり、国民自らが制定する「憲法」の中にこそ盛り込むべきではないか・・・このことの必要性を痛感する次第である。

*つまり、この憲法改正草案作成の基本的姿勢は、復古的なもの(戦前回帰)ではなくて、徹底的に未来志向の姿勢なのであり、今日までのわが国の歴史を直視した上で、その悪しきを反省し、よきものは後世に伝えていこうというもの(歴史を全否定も全肯定もしないで、素直に歴史に学ぶ姿勢)であることを、ここで改めて強調しておく必要がある。

このようなことを踏まえて、私達の考える新しい国家像(憲法像)の理念を提示すれば、それは次のようなものである。

 まず、第一に、新しい憲法は、日本国憲法の三つの基本的原理を、人類普遍の価値として発展させつつも、わが国のこれまでの歴史、伝統及び文化に根ざした固有の価値、すなわち、人の和を大切にし、相互に助け合い、平和を愛し命を慈しむとともに、美しい国土を含めた自然との共生を大事にする国民性(一口で言えば、それらすべてを包含するという意味での「国柄」)を踏まえたものでなければならない。

 そもそも、(a)「個人の尊厳」を究極・最高の価値とする「基本的人権の尊重」の原理は、「みんなのしあわせ」を実現しょうとする憲法の根本的価値であり、また、(b)戦争のない平和な世界、更には安心して暮らせる自然・地球環境の保全を含む「平和主義」の原理は、そのための土台である。そして、(c)それを実現するための統治機構の原理が「国民主権」の原理なのであって、これら三つの基本的原理を普遍的価値(基礎)として措定した上で、わが国の固有の価値=「国柄」をその応用型として構築することは、「日本の顔」が見える新しい憲法の重要な要素である。新しい憲法においては、このような我が国及び日本人としてのアイデンティティーを確認してこそ、真の国際社会化に信頼される国家となり、また、真の国際人となることが出来るのである。

* 本憲法草案の第一のポイントは、我が国の「国柄」を体現した憲法でなければならないことを明記している点である。そこでいう「国柄」とは、従来意味されてきたような復古的なもの(1895年〜1945年までの戦前の一時期に考えられた「国体」ではなく、平和を愛し、命を慈しむとともに、草木一本にも神が宿るとして自然との共生をも大事にするような平和愛好国家・国民という「国柄」であり、更に付言すれば、そこに言う歴史には、第二次世界大戦における敗北の歴史をも含めたものである。すなわち、戦争から得た貴重な教訓としては、「和の精神」「平和を愛する国民性」を改めて再確認したことであり、新しい憲法は、それを進化・高度化したものといえる。)

 そもそも、人類普遍の原理とされる憲法の三つの基本的原理もすべて上記のような我が国の「国柄」と調和しこそすれ、矛盾するようなものでは決してないことも、改めて確認しておく必要がある。
* このような「国柄」を説得力をもって説明するためには、我が国の歴史を概観することも必要かもしれない。@この島国の中で、長い時間かけて自然と調和し、他人と相和し、平和を愛する国民性が養われてきた歴史、A明治維新後の近代国家としてのキャッチ・アップの国づくりの歴史、B敗戦にいたる戦争への歴史、C戦後の復興の過程でのキャッチ・アップの歴史、といった具合である。
 そして、今まさに、激動の時代に突入しているのであり、良きものを残し、反省すべきところは反省して、未来に向かっていこう、というわけである。

第二に、国民の誰もが自らを誇りにし、国際社会化に尊敬される「品格ある国家」を目指すということである。それは同時に、科学技術の進歩や少子化・高齢化の進展など新たな課題を的確に対応しつつも、人間の本質である「社会性」が、自立し共生する個人の尊厳を支える「器」であることを踏まえ、家族や共同体が、「公共」の基本をなすものとして位置付けられるものでなければならない。

 そもそも、二一世紀における現代憲法は、国家と国民を対峙させた権力制限規範というにとどまらず、「国民の利益ひいては国益を護り、増進させるために公私の役割分担を定め、国家と地域社会・国民とがそれぞれに協働しながら共生する社会をつくっていくための、透明性あるルールの束」としての側面をも有することに注目すべきである。
 そういう実質を伴った国家・社会を構築して初めて「品格ある国家」となることが出来、国際社会において尊敬され、名誉ある地位を占めることが出来るのである。

* 本憲法草案の第二のポイントは、誤った個人偏重主義を正すために、公共(国家や社会)の正しい意味を再確認させること、そして、それが単なる「国家主義」の復活ではなくて、自立し共生する個人の尊厳に裏打ちされた「品格ある国家」でなければならないこと、である。 

私たちが目指す、このような新しい憲法を一言で表現するとすれば、それは「己も他もしあわせに」(更には「自国も他国もしあわせに」)をスローガンとした「共生憲法」ということができる。

 *第1章「総則」に続けて、我が国の「国柄」を象徴する「天皇制」を第2章においた。後は立憲主義国家の憲法の事例にならって、憲法の目的ともいうべき「人権宣言」にあたる条項(第3章)を先にし、(同様の趣旨から、第4章・平和主義条項もこれと合わせて)、それを担保する「統治機構」に関する規定を後に置いてみた。(第5〜7章)。以上のいわば「平時」の条項を規定した後に、「非常時」に関する条項(第8章)を置き、最後に、改正条項(第9章)を置く、という構成にした。

 
第一章 総則

* 三つの基本的原理を発展的に拡充して確認するとともに、我が国の「国柄」を象徴する天皇制を明確に位置付けるために、冒頭に「総則」の規定を設けた。併せて、他国の憲法に例が見られる「領土」や「国旗・国歌」に関する規定なども設けた。

1. 象徴天皇制と国民主権の原理
・ 我が国は、天皇を象徴とする自由で民主的な国家であり、その主権は、国民に存し、すべての国家権力は国民に由来することを確認する。 
・ 国民は代表者を通じてその主権を行使するという「議会制民主主義」の原則を定めるとともに、すべての国民は、主権者として、自立と共生の精神にのっとり、その権限を行使するものとすること。
*第一段落は、天皇制と国民主権の関係を定めたものであるが、同時に、我が国の「国柄」を「(天皇を象徴する)自由で民主的な国家」と位置付けている。

2. 基本的人権尊重の原理
・ 我が国は、法の支配に服し、法秩序の至高の価値である「個人の尊厳」を基本として、自立と共生の理念にのっとり、すべての人々の生命、自由及び幸福追求の権利を最大限に尊重することを定めるものとすること。
* ここにいう基本的人権の尊重は、誤解された「個人主義」=利己主義とは異なり、他人の権利の尊重と両立しなければならないという「共生の原理」が含まれているものである。そのことは、冒頭の、「基本的考え方」でも示した通であるが、より具体的には、第三章の人権の章の冒頭(第一節の1)に規定されている。

3. 発展・拡充された新たな平和主義の原理(環境保全主義を含む) 
・ 我が国は、国際社会の趨勢としての戦争放棄の思想を堅持しつつ、国際社会と協働して、積極的に国際平和の実現に寄与することを宣言するものとする。
・ 戦争が最大の環境破壊であることはいうまでもないが、世界の人々を脅かすのは戦争だけではないこと、すなわち、人類生存の基盤としての自然(地球環境)の保全を認識した上で、我が国は、国際社会と協力しながら、その保全に努め、人間と自然との共生に積極的に寄与することを宣言するものとすること。

* 従来の「一国平和主義」を脱し、より積極的な平和主義へと発展させるとともに、21世紀の憲法として、平和とともに人間存在の土台をなす、地球環境の保全の必要性にも言及したもの。

4. 領土
・ 我が国の領土は、・・・・・・とすること。

5. 国旗及び国歌
・ 我が国の国旗は、日章旗であることを定めるものとすること。
・ 我が国の国歌は、君が代であることを定めるものとすること。
  
6. 最高法規・憲法尊重擁護義務
・ この憲法は、国の最高法規であって、その条項に反する法律、命令及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しないものとすること。
・ 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し、擁護する義務を負うものとすること。
・ 国民は、この憲法を制定した主権者として、普段の努力によってこれを保持しなければならないものであって、これを尊重し、擁護する責務を有するものとすること。 
* 憲法の最高法規性(現行憲法第98条)とともに、憲法尊重擁護義務(同第99条)を規定したもの。尚、議論のある国民の憲法尊重用語義務については、国民はこの憲法を定めた主権者であることにかんがみ、天皇・大臣等の公権力を担う側の憲法尊重擁護義務とは区別して、憲法尊重擁護の「責務」という形で規定した。「普段の努力による保持」の文言は、現行憲法第12条に規定されているものである。


第二章 象徴天皇制

1. 天皇の地位
・ 天皇は、日本国の元首であり、日本国の歴史、伝統・文化ならびに日本国民統合の象徴として我が国の平和と繁栄及び国民の幸せを願う存在であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づくことを確認するものとする。
 * 天皇が元首であることを明記するとともに、その「元首」の意味は、我が国の歴史・伝統・文化といった「国柄」と国民統合の「象徴」であることを定めたものであるが、そこでは「我が国の平和と繁栄及び国民の幸せを願う存在」という表現でもって、天皇の日々の象徴としての行為(存在)の特質をより具体的にあらわして、より実態に近い「象徴性」を平易に表現している。重ねて、この象徴天皇制と国民主権の関係を明確にしている。
 
2. 位の継承(女帝の容認)
・ 皇位は世襲のものであって国会の議決した皇室典範の定めるところにより、男女を問わずに、皇統に属するものがこれを継承するものとする。
 * 女帝問題について、憲法レベルで決着することとしたものであるが、これによって基本的に「男系男子」によって受け継がれてきた天皇制(天皇家)を変質させることにならないか、更に議論が必要か。

3. 公的行為の位置付け
・ 現行憲法の第4条[国事行為の一般的規定]・6条[首相・最高裁長官の任命]・7号各号[憲法改正の公布・国会召集など十項目の行為]に定められている国事行為のほかに次に掲げる行為を、新たに「公的行為」として位置付け、これを内閣の助言と承認の下におくことによって、その責任は内閣が負うことを明確にすること。

   一 象徴としての行為(例えば、国会開会式でのお言葉、認証官任命式への臨席、外国訪問、歌会始の主宰、災害見舞いなど)
   二 皇室行為(例えば、皇室内部の諸行事の実施、宮中祭祀の主宰など)
・ 天皇は、この憲法が定める国事に関する行為及び公的行為のみを行い、国政に関する権能を有しないものとすること。

* 現行憲法においては、「天皇は、この憲法の定める国事行為に関する行為のみを行う」ものとされていることから、国事行為と私的行為以外は全く何も出来ないのか、という疑義があることから、現に行っておられる「公的行為」については、これを憲法上明確に位置付けることとした。
  その際、天皇家内部の「私的行為」とされている「皇室行為」についても、これも天皇制という伝統を支える「公的行為」として位置付けなおして、これを明文化することとした。(第一段階の第二号)
*  尚、天皇が、「国政に関する権能を一切有しない」ことについては、現憲法どおりとする。

4. その他
* 現行憲法の天皇の章(第一章)のその他の規定については、表現の整序を要する規定(例えば、第七条四号の「国会議員の総選挙」など)以外は、基本的に現行憲法どおりとする。


第三章   基本的な権利・自由及び責務

第一節総論的事項

1.基本的人権の尊重の原則とその法的性質等 
・ まず、「個人の尊厳」を究極の価値とする人間の侵すべからざる生来の権利及び人格の自由な発展の尊重ならびに法及び他人の権利の尊重は、政治的秩序及び社会平和の基礎であって、憲法は、この「個人の尊厳」を最高価値とする価値規範を体系化したものであるという立憲主義の大原則を、確認するものとすること。
・  その上で、この憲法が保障する基本的な権利・自由は、すべての公権力を拘束すること、これらの基本的権利・自由の行使は、他人の基本的権利・自由との調整を図る必要がある場合又は国家の安全と社会の健全な発展を図る「公共の価値」がある場合に限って、かつ、法律の定めるところにしたがってのみ、制限されること、ただし、いかなる場合にも、その本質的内容は尊重されなければならないことなどを定めるものとすること。  
・ 更に、この憲法が保障する基本的権利・自由に関する規定は、世界人権宣言及び我が国が批准した人権に関する国際条約に適合するようにこれを解釈しなければならないとの解釈指針を定めるものとすること。
*  基本的人権の中核的思想である「個人の尊厳」は、あらゆる公権力行使の制約原理となるものであることを明確にする(第一段落)とともに、併せて、そのような基本的人権も「公共の価値」によって制約される場合があることを規定している(第二段落)。特にこの「公共の価値」による人権制約は、学会における通説的な理解である「人権調整の場面」だけでなくて、「国家・社会の安全・健全な発展」のためにも許容される事を明確にしている。他方、第3段落は、「国際化が進展する中での国際的人権保障の観点に配慮したもので、21世紀の憲法としての斬新性を出そうとしたものである。
*  なお、現行憲法の「公共の福祉」に代えて、「公共の価値」という用語を用いたのは、「公共の福祉」の概念はやや手垢がついたものとなっているので、敢えてそれを避けた次第である。但し、この用語が適切であるかどうか(より適切な用語がないか)については、更に検討が必要と思われる。例えば、「公共の価値」のほか、「公共の利益」(読売思案で用いられている用語)、「公共の本質」「公共の意義」「公共の福利」「公共の幸せ(しあわせ)」などである。
   
2. 日本国民及び外国人の人権
・ 現行憲法と同様に、日本国民たる用件は、法律でこれを定めるものとすること。
・ 他方、グローバル化の進展等に配慮して、外国人についても、わが国が批准した国際条約及び法律の定める条件のもとで、その性質が許す限り、この憲法が保障する基本的な権利・自由を享受することを確認しておくものとする。
* 第一段落は現行憲法の第10条と同様の規定だが、第二段落は、上記1の第三段落と同様の趣旨から国際的人権保障の観点に配慮したもの。


第二節 基本的な権利・自由

1. 現行憲法の基本的な権利・自由
* 現行憲法の第3章(国民の権利及び義務)に掲げる個別の権利の内、この草稿に掲げるもの以外のものについては、必要な補充をした上で基本的に引き継ぐものとする。

2. いわゆる「新しい人権」の追加
@ 名誉権、プライバシー権及び肖像権
・ 名誉、個人及び家庭のプライバシーならびに肖像権は、これを保障すること、また、これらの権利行使を保障するため、情報の利用については、法律の定めるところにより、制限することが出来ることを明確にするものとすること。
* プライバシー保護のために、情報の利用(表現の自由)が制限されることがある旨を憲法上明確にしたところがポイントである。 
A 知る権利(情報アクセス権)
・ 国、地方自治体その他の公共団体は、国民主権の理念にのっとり、その諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにしなければならないものとすること。
・ 何人も、法律の定めるところにより、国、地方自治体その他の公共団体の保有する情報の開示を請求する権利を有するものとすること。
* いわゆる「知る権利」については、国や自治体の「説明責任」と、国民側の「情報開示請求権」という利用面から規定してみた。これは、現行の「情報公開法」の枠組みを参考にしたものである。

B 犯罪被害者等の権利
・ 犯罪及びこれに准ずる心身に有害な影響を及ぼす行為によって害を被った者及びその家族又は遺族は、個人の尊厳が重んじられ、その尊厳に相応しい処遇を保障される権利を有するものとすること。[具体的には、法律の定めるところにより、その受けた被害を回復し、又は軽減し、再び平穏な生活を営むことが出来るようにし、及びこれらの者がその被害にかかわる刑事に関する手続きに適切に関与する権利が保障されるものとすること。]
* 犯罪被害者の権利については、今国会に議員立法として提出が予定されている「犯罪被害者等基本法案」の基本理念を規定してみたものである。

3. 従来の権利規定の修正
@ 表現の自由と青少年の保護
・ 集会・結社及び言論、出版その他一切の表現の自由については、現行憲法の規定どおり、これを保障することとするとともに、併せて、青少年を保護するため、出版及び映像に関する規制について法律で定めることが出来る旨明確にするものとすること。
* フィンランドの憲法にならって、青少年の保護・健全育成のための規制条項を追加してみたもの。

A 政教分離
・ いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならないものとすること。
・ 国、地方自治体その他の公共団体及びその機関は、我が国の社会的又は文化的諸条件に照らし社会的儀礼又は習俗的行事とされている範囲を超えて、宗教的意義をもって特定の宗教を援助、助長もしくは促進又は圧迫もしくは干渉となるような宗教的活動をしてはならないものとすること。
* 第一段落は、現行憲法第20条一項そのままであるが、第二段落は、現行憲法第20条3項をわが国の実態に合わせて、緩和しょうとしたものである。すなわち、新道や仏教に由来しながらも学に伝統の習俗になっているようなものについては、この政教分離条項に違反するものでないことを明確にするため、最高裁判所(いわゆる緩和された「目的・効果基準」を採用したといわれる判例)等を参考にしながら規定したものである。

B 財産権の保障とその限界(及び知的財産権の保障)
・ 財産権は、これを保障するものとし、その内容及び限界は、法律で定めるものとすること。
・ 財産権は義務を伴うものであり、その行使は、同時に公共の価値に適合するようにしなければならないものとすること。また、公用収用は、公共の価値のためにのみ許されるものであり、公用収用を行う場合には、法律の定めるところにより、正当な補償が行われるものとすること。
・ 国は、知的創造力を高め、活力ある社会を実現するため、知的財産及びその保護に関する制度の整備に努めなければならないものとすること。
* 第1・2段落は、現行憲法第29条の財産権の保障に関する規定について、公共の価値による制約をより強化した形で手直ししたもの。 これによって、特に土地所有権に代表されるような財産権の行使を制限する立法はより定めやすくなるものと思われる。
* 第3段落は、知的財産権に関する保護の規定であるが、その権利性の側面を強調するのではなくて、国に対する制度的保障としての義務付けの面から規定したものとなっている。これによって、既にある「知的財産基本法」やその個別の実施法などの法律レベルでの措置を促進することになる。

C 企業その他の経済活動の自由
・ 企業その他の私的な経済活動は、自由であること。ただし、公共の価値に反し、又は安全や自由及び個人の尊厳を害するような方法で行うことは出来ないものであることを確認するものとすること。
* 現行憲法第29条(あるいは第22条の職業選択の自由)に含意されているとされる「営業の自由」について、企業その他の経済活動の自由という形で、規定したもの。

第三節 国民の責務

*  厳格な意味での「義務」(裁判所において具体的に強制可能な義務)ではなくて、幅広い抽象的な訓示的意味での義務というニュアンスを出すため、「責務」という形で規定したもの。国民のものである「憲法」が、国民を縛ろうとするのか、という素朴な批判にも応答できるように、又、出来るだけ幅広い合意が得られるような配慮・工夫をしたつもりである。

1. 国防の義務及び徴兵制の禁止
・  日本国民は、国家の独立と安全を守る義務を有するものとし、また、国家緊急事態にあっては、法律の定めるところにより、国及び地方自治体その他の公共団体の実施する措置に協力しなければならないものとすること。
・  同時に、上記の規定は、徴兵制を容認するものではないことを明確にすること。
* 第一段落で「国防の義務」「国家緊急事態における協力義務」を明記するとともに、「徴兵制復活か!?」などという懸念を払拭するため、第二段落の規定をわざわざ設けることにしたもの(なお、世界の趨勢でも、徴兵制は軍事的にも必ずしも実効的ではないものであり、職業軍人による軍隊へと変わる傾向にあるようである)。

2. 納税その他の社会的費用の負担の義務
・ 何人も、法律の定める公正な租税制度に基づいて、納税の義務を負うものとすること。
・ 何人も、共生及び連帯の理念に基づいて、法律の定めるところにより、社会保障その他の社会的費用を負担する責務を有するものとすること。
* 地域社会や国家を支えるという「共生」の精神が、財政の側面で表れたものが「納税の義務」であるということができようが、それと同時に、国民負担率などにおいて租税負担と同視される社会保障の負担についても、同じ側面から位置付けようとしたもの。


第四節 社会目的(プログラム規定)としての権利及び責務

* 第二節に掲げる「基本的な権利・自由」とは異なり、「権利」性が弱く、その保護のためには国や自治体による制度の具体化が必要な、いわゆる「制度的保障」といわれる規定に属するものを、別の説としてまとめて規定しようとしたものが本説である。そこでは、個人の権利とする部分と、国家・自治体の責務とされるものとが一体化されているものが少なくないので、「第二節・基本的な権利・自由」及び「第三節・国民の責務」の後に、「プログラム規定としての権利・責務」という形で規定している(なお、このような観点からは、現行憲法の権利規定の一部(例えば第25条の生存規定など)についても、この説の中に位置付けるような見直しが必要となろう)。
  ちなみに、このような発想は、基本的には、「人権のインフレーション」に歯止めをかけようとの趣旨に基づくものであるが、同時に、このような分類自体は、各国の憲法やEU憲法条約などにも見られるものであることにも注目したい。

1.教育の基本理念
・ 教育は、人格の完成を目指し、(a)この憲法の定める「個人の尊厳」が他人の権利の尊重を前提として成り立っているという自立と共生の精神を深く認識し、法令その他の社会通念の規範を遵守するとともに、主体的に社会の形成に参画する態度を涵養し、(b)生命を尊び、自然に親しみ、環境を保全し、よき習慣を身に付けること、また、(c)我が国の歴史、伝統・文化を尊重し、郷土と国を愛し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を涵養することを旨として行わなければならないものとすること。
* 教育こそ、国家の基礎であることにかんがみ、教育の権利・責務とは別に(最終的な条文の場所等に着いては、更に検討が必要)、教育の基本理念を定めようとするもの。ここでは、特に(a)の利己主義を廃止、自己の権利とともに他人の権利を尊重する[公共心]の育成の必要性を、強調している。なお、いわゆる「愛国心」の明記(上記(c)の部分)に関しては、教育基本法の動きとも関連して、更に検討することも必要か。

2. 家庭の保護
・ 国及び地方自治体は、家庭が社会生活において大切な共同体であり、子どもの健全育成の基盤であることにかんがみ、その社会的、経済的及び法的保護を保障するものとすること。
* 「家庭の保護」について、国・自治体の保護責務という形で規定したもの。「家族」ではなくて「家庭」としたのは、血族的な意味合いは明治憲法下における「家」制度を連想させるという復古的な色合いを払拭して、さまざまな形の「家庭」があることを容認する趣旨からである。同時に、そのような意味での、「家庭」は、社会や国家という「公共」を構成する最小の単位であって、そこで伝統や文化や人間的な慈しみの気持ちなどが伝承されていく土壌であることを、「不可欠な共同体」「子どもの健全育成の基盤」という表現で表そうとしたものである。

3. 環境権及び環境保全の責務
・ 何人も、人格の発展にふさわしい良好な環境のもとに生活する権利を有し、及びこれを保護する責務を負うものとすること。
・ 国及び地方自治体は、現在及び将来の世代の者に対し、良好な環境に生活する権利及び自らが生活する環境に関係する政策決定に影響を及ぼす可能性を保障する責務を有するものとすること。
* いわゆる「環境権」については、国民(市民)の側の「権利」(ただし、これがプログラム的な権利であることは、第二の「基本的な権利・自由」ではなくて本説に規定したことからも理解できよう)としてだけではなく、国民(市民)の責務であることを第1段落で明らかにするとともに、それは国・自治体の責務であることを、第2段落で明らかにしている。

4. 生命倫理への配慮
・ 何人も、生殖医学及び遺伝子医学の乱用から保護されなければならないことを定めるものとすること。
・ 人の胚形質及び遺伝物質ならびに臓器、組織及び細胞の移植に関しては、法律の定めるところによらなければならないこと、また、国は、当該法律を定めるにあたっては、個人の尊厳及び人格を損なわないよう、配慮されなければならないことを定めるものとすること。
* スイスの憲法規定などを参考にしながら、生命倫理に関する規定を設けたもの。
   この条項が憲法上に位置付けられることによって、生命倫理(個人の尊厳)への配慮からの学問の自由に対する法律による制限が、より適切に行われやすくなることが期待される。 


第四章 平和主義及び国際協調

* 本章では、憲法目的としての「平和主義(及び国際協調)」を定め、これを担保する手段という観点から、第八章では、「国家緊急事態・自衛軍」について定めている。すなわち、崇高な理想もそれを実現するにふさわしい制度と実力を背景にして初めてその意義を有するものであることを、明確にしようとしたものである。一般に同一の議論の中で言及されることの多い「平和主義」と「自衛軍」について同じ章の中で規定しないのは、このような論理的関係を明らかにするとともに、人権保障(第三章)と国民主権の統治機構(第五章等)との論理的関係と同様のものであることにもならったものである。

第一節 平和主義

1. 国際平和への寄与
・ 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、全世界の国民がひとしく貧困、環境破壊、薬物、国際組織犯罪、感染症、紛争、難民流出、対人地雷等の社会構造的な災禍から免れ、尊厳を維持した人間として創造的で価値ある人生を生きる権利を有することを確認するものとすること。
* 現行憲法の定める平和主義を更に発展させて、小渕内閣の主導し、国際的にも定着しつつある「人間の安全保障」の基本的な考え方を規定したもの。

2. 戦争の放棄と武力行使の謙抑性
・ 日本国民は、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄すること。
・ 日本国民は、自衛または国際貢献のために武力の行使をともなう活動を行う場合であっても、それは平和的な手段によっては問題の解決を図ることが困難な場合であって、武力の行使は究極かつ最終の手段であり、必要かつ最小限の範囲内で行わなければならないことを深く自覚しなければならないことを定めるものとすること。
・ 武力の行使を伴う活動を行う場合については、事前(緊急を要する場合には事後)の国会の承認を要するものとし、その手続き及び当該活動の基準・制限その他必要な事項については、前項の趣旨に基づいて、法律で定めるものとすること。

* 第一段落は、1項の「侵略戦争の放棄」を定めたもの。したがって、この第一段落によっては、「自衛(これには、当然に、個別的・集団的自衛の両者が含まれる)や「国際貢献(国際平和の維持・創出)」のための武力行使は、禁止されておらず、容認されることになる。第2段落では、このことを前提にして、その場合であっても、武力の行使は平和的手段が尽きた最終・究極の手段であり、さらには、必要最小限の範囲内で行われなければならないことを、規定したものである。また、第3段落は、安全保障基本法(及び国際貢献基本法)の中で、国会承認その他の具体的手続き等を定めることを義務付けており、そこでは、武力行使の手続き・基準のみならず、武器使用基準などについても、規定されることになろう。
* 以上の説明を踏まえて本条項の趣旨を端的に説明すれば、本条項は、いわゆる「制限された(集団的)自衛権を認める」という立場にたつことを明確にした規定であるということが出来る。

3. 大量破壊兵器の廃絶及び非核三原則
・ 日本国民は、非人道的な無差別大量破壊兵器が世界から廃絶されることを希求し、自らはこのような兵器を製造せず、保有せず、及び持ち込ませないものとすること。
・ 上記のことに加えて、日本国民は、唯一の被爆国として、核兵器については、特に、これを製造せず、保有せず、及び持ち込ませないものとすること。
* 上記2と同様に、平和愛好国家としての我が国が率先して「大量破壊兵器の廃絶」に向けた努力をすることを、憲法レベルで規定しようとしたもの。第2段落は、事柄としては、第一段落に含まれているということも出来るが、唯一の被爆国としての我が国の「歴史」を風化させないためにも、国是としての「非核三原則」を特記したものである(表現ぶりについては、やや整理が必要か)。

第二節 国際協調

1. 国際法の国内法的効力
・ 我が国が締結した条約及び確立された国際法規は、法律に優先し、日本国内に居住するものに対して、直接に権利及び義務を生じさせることを明らかにすること。
* 解釈にゆだねられている「条約と法律」の関係について、各国の憲法規定にならって、明確に規定しようとしたもの。

2. 国際活動への積極的参加
・ 我が国は、確立された国際的機構の活動その他の国際の平和と安全の維持及び回復ならびに人道的支援のための国際的な共同活動に、積極的に参加するものとすること。
* 読売私案を参考にした規定である。「確立した国際的機構の活動」とは、現時点では国際連合によるものを念頭においているが、将来的にはそれにとどまるものではなくて、EUのような機関がアジアにも誕生するようなことがあれば、それもこれに含まれることになる。
  もちろん、現時点でも、「その他の国際の平和と安全の維持・・・・・ための国際的な共同活動」とあるから、国連の活動に限定されているわけではない。 


第五章   統治の基本機構

※ 本章では「統治の基本機構」ということで、国会・内閣(内閣総理大臣)という政治の基本機構だけではなくて、司法裁判所・憲法裁判所といった裁判所の組織についても、併せてきていしている。というのは、憲法裁判所の組織・機能は、いわば「政治」と「(通常の)司法」との境界線に位置する組織であり、これによって統治機構全体が「抑制と均衡」の働いた制度となることを期待しているという趣旨を、形式(構成)の面でも明らかにしておくのが適切と考えるからである。

第一節 国会

1 国会の権能
 国会は国の唯一の立法機関として法律を制定し、予算を議決するほか、内閣総理大臣の行政執行を監督し、この憲法が定める範囲内において司法裁判所および憲法裁判所を民主的な観点から統制するとともに、この憲法が付与するその他の権限および他の国家機関の権限とされる権限以外の一切の国政に関する権限を行使することを、確認するものとすること。
※ 国会の地位に関する「国権の最高機関」という表現(憲法第41条)は、一般に「政治的美称」と解されていること等にかんがみて、削除してある。ただし、国会は、国民代表機関として、主権者・国民に最も近い立場にある国家機関であること、そこでこそ国政の基本的方向性は決められるべきことに変わりはないのであって、その根幹が、立法権、予算の議決権、行政監視監督権等にあることを、改めて明記している。尚、権限行使について強い独立性が保障される司法裁判所・憲法裁判所についても、国会は、この憲法が定める弾劾その他の権限を行使することを通じて、民主的な観点から統制することができる旨を、明確にしている。

2 両院制及び衆参両院議員の選出方法・任期等
※ 両院制を堅持しつつも、その役割分担及び選出方法については、次のように、大幅に改めるものとしている。なお、本草案で触れていない事項(成年者による普通・秘密選挙のほか、両院議員の兼職禁止、議員歳費、不逮捕特権、免責事項等)に関する規定については、基本的に現行のままとする。

@ 両院制
国会は、衆議院及び参議院で、これを構成するものとすること。
A 衆議院議員
衆議院は法律の定めるところにより小選挙区及び比例選挙区から国民の直接選挙により選出された、全国民を代表する議員で組織し、その任期は四年とすること(ただし、衆議院が解散された場合には、その期間満了前であっても、その解散の時にその任期は終了すること)。
B 参議院議員
参議院は、道州ごとに法律の定めるところにより選挙された議員及び法律の定めるところにより選出(推薦)された議員で組織し、その任期は六年とし、三年ごとに議員の半数を改選すること。

※ 参議院については、道州制の導入とも相まって、地域代表的な議院として構成し、その選出方法は(a) 道州議会による間接選挙による部分と、(b)有識者による任命による部分とを組み合わせてある。(道州法の導入が見送られた場合には、現行の都道府県ごとの選出ということになろう)。
※ 上記(b)の具体的な任命方法については、衆議院、内閣総理大臣、最高裁判所及び憲法裁判所のそれぞれからの推薦に基づいて任命することするのが適切であると考える。(この任命手続きは、憲法事項であるとすべきであると考えるが、更に検討が必要)。なお、任命による議院としては、例えば、首相や衆参両院議長、憲法裁・最高裁長官の経験者などが想定されるのではないか。

3 国政調査権の充実強化
@ 議院・委員会の国政調査権と少数者調査権
・ 各議院及び各議院の委員会は、それぞれ国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができるものとすること。
・ 上記の国政調査権の発動について各議院の議院○○人以上の議員からの要求があり、かつ、法律で定める期間以内にこれを不当と認める所管委員会の議決がないときは、当該所管委員会は、当該要求に基づく国勢調査を行う義務を負うものとすること。
※ 首相権限の強化(次の第二「内閣総理大臣及び行政」参照)とのバランスをとるため、国会の国政調査権の充実強化を図ることとしたものであるが、そのポイントは、上記の第二段落にある、いわゆる「少数者調査権」である。これは、議院内閣制の下では、政府や与党(国会の多数党)に支えられることになるため、通常の多数決原理では行政監視のための情報が野党には十分には来ないことに配慮したものである。つまり、国会の行政監視機能をより十分に発揮させるために、現行国会法にも、ドイツの制度を参考にした予備的調査の制度があるが、それを一部手直しをしながら憲法事項に格上げしてみたもの。

A 議会オンブズマン
・ この憲法が保障する国民の基本的な権利及び自由を擁護するとともに、国会の行政監視活動に資するため、法律の定めるところにより、国会に、議会オンブズマンを設置するもとすること。
※ 本年の衆議院憲法調査会の海外調査を参考に、人権保障・行政監視の観点から議会オンブズマンを設置することとしてみたもの。国会の行政監視活動の補助者(国会補佐機関)として位置付け、その活動内容は、国会に報告されることとなる。
なお、議会オンブズマンの具体的な権限(所管事務?)については、法律レベルにおいて、「議会オンブズマンは、行政府の活動を監視し、国民からの苦情を受け付け、及び処理し、並びにその活動内容を国会に報告することを職務とする」旨定めることとなろう。

4 衆議院の優越(法律・予算・外交事案)
※ 参議院議員の選出方法を道州議会による間接選挙と任命制に変えることに伴い、衆議院が唯一の直接公選の国民代表機関となることから、国民主権の原理に基づきその権能を強化し、法律案、予算案、外交関係の事案(条約と大使の任命)については、現行憲法の定める衆議院の優越条項を更に強化した。

@ 法律の制定手続き
・ 法律案は、国会議員のみがこれを発議することができるものとし、この憲法の定めのある場合を除いては、両議院で可決したときに、法律となるものとすること。
・ 法律案について、両議院の議決が一致しない場合又は参議院が衆議院の可決した法律案を受け取った後三十日以内に議決しない場合において、当該法律案を衆議院で再び可決したときは、当該法律案は法律となること、ただし、法律の定めるところにより、衆議院が、両院協議会の開催を求めることを妨げないものとすること。
※ まず、法律案については、衆議院の再議決の要件を現行の3分の2から過半数にするとともに、みなし否決の要件とされる期間も現行の60日から30日に短縮した。又、第一段落の冒頭で、法律案は、国会議員のみが発議できることとした。

A 予算の議決手続
・ 予算案は、現行どおり、衆議院に先に提出しなければならないこととするとともに、両議院の議決が一致しないとき又は参議院が衆議院から送付をうけた後三十日以内に議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とすること。ただし、法律の定めるところにより、衆議院が、両院協議会の開催を求めることを妨げないものとすること。

B 条約の承認手続き
・ 条約の締結に必要な国会の承認については、予算の例によるものとすること。
※ 次に、予算案・条約承認については、両院の議決一致しないときに現行憲法では必要とされている両院協議会の開催を、衆議院の意向による任意のものとし、予算の早期確定と衆議院の優越の強化の下に予算の早期確定を図った。

C 大使の任命手続
・ 内閣は大使を任命するに当たっては、衆議院の同意を得なければならないものとすること。
※ この大使任命についての衆議院の同意権については、上記Bと同様に外交関係処理に関する国民代表機関のコントロール権強化の発想から定めたものである。

5 参議院の優越(決算先議・司法裁判所及び憲法裁判所に対する民主的統制)
※ 他方、参議院の優越的権能については、@決算の先議権と、A司法裁判所及び憲法裁判所に対する民主的統制をさだめている。

@ 決算の先議権
・ 決算は先に参議院に提出しなければならないものとすること。
・ 決算に関する参議院の審議の結果及びその概要が衆議院に送付された場合においては、衆議院は、これを、その予算案の審議において尊重しなければならないものとすること。
※ この@は、予算の衆議院先議とのバランスにかんがみて、決算については参議院先議としたものである。これによって、予算中心の衆議院と決算中心の参議院という図式を明確にし、衆議院の決算審議・参議院の予算審議は、それぞれ他院の審議の補充・補完的なものと位置付けられることになる。
  なお、決算審議の結果は予算審議に反映させてこそ意味がでてくるものであることを考えて、参議院の慎重な決算審議の結果を衆議院は尊重する旨の規定を設けることとした。
A 司法裁判所及び憲法裁判所に対する民主的統制

・ 最高裁判所裁判官の国民審査は廃止することとし、これに代わる最高裁判所裁判官の適格性審査は、法律の定めるところにより、参議院が行うこととすること。
・ 最高裁判所及び下級裁判所の裁判官並びに憲法裁判所の裁判官の訴追及び弾劾は、法律の定めるところにより、参議院が行うこととすること。
※ 解散のない良識の府として、参議院には、裁判所に対するコントロール権限を与えるのが適切ではないか。ただし、司法裁判所のみならずかなり政治的な色彩を持ってこざる得ない憲法裁判所についてまで、衆議院のコントロールが一切及ばないとするのが適切か、については、更に検討が必要か。

6 議事手続(定足数)
・ 両議院は、それぞれその在籍議員3の分の1以上の出席がなければ、議決をすることができないものとすること。(議事の定足数は、削除するものとすること。)
※ あくまでも定足数は「議決」時点だけ必要とするものとし、「議事」を進める際にはこれを要しない(つまり、議長と発言者さえいればよい)ものとした。
なお、これは本会議に関する規定であるが、この趣旨にかんがみれば、新たな国会法においては、委員会における議事の定足数規定(現行国会法49条)も削除されることとなろう。

7 政党
 @ 政党結成・活動の自由
 ・ 政党は、議会制民主政治において、国民の政治的意思を国政に媒介する重要かつ不可欠な存在であり、その結成および活動は、憲法及び法律を尊重しそれらに反しない限り、自由であることを明確にする ものとすること。

 A 政党法の制定
 ・ 政党は、議会制民主政治における自らの役割を深く自覚し、その健全な発展につとめなければならないこと、また、政党の内部組織及び活動は、民主主義の諸原則に適合的なものでなければならないものとし、その基準については、法律でこれを定めるものとすること。
※ 通常の「結社」と同レベルで扱われている「政党」を、憲法上位置付けるとともに、その果たすべき役割を明確にすることによって、法律レベルでの政党法の制定を義務付けようとしたもの。

第二節 内閣総理大臣及び行政

※ 行政権の主体は、「内閣」ではなくて「内閣総理大臣」ときていすることによって、首相のリーダーシップがより実効的に発揮できる制度に改変しようとしたもの。内閣総理大臣及びその他の国務大臣によって構成される「内閣」の組織自態は残るものの、各国務大臣は、全て内閣総理大臣の行政権行使を補佐する存在となる。
なお、同時に、行政活動に絡む諸原則に関する規定も憲法上明記している。「下記の3」。

1 内閣総理大臣のリーダーシップの明確化
・ 行政権は内閣総理大臣に属するものとし、内閣総理大臣は、内政及び外交その他国務全般を総理し、直接に又は国務大臣を通じて間接に、行政各部を指揮監督することを明確にするものとすること。

2 内閣総理大臣の職務等
※ 現行憲法において「内閣」の職務等とされている事項について、これを「内閣総理大臣」の職務等として、首相中心の行政運営を明確にすること以外は、基本的に現行憲法の規定どおりとすること。

3 行政活動の諸原則
 次の事項を、「行政活動の諸原則」として定めるものとすること。
 @ 行政執行の原則
・ 国の行政は、国民全体の利益に奉仕し、客観的妥当性を保持しつつ、効率性の原則に従って、正義及び法律に基づいて、執行されなければならないこと。
A 国の行政機関の法定主義
・ 国の行政機関は、法律に基づいて、これを設置するものとすること。
B 公務員の地位
・ 全ての公務員は、国民全体の奉仕者であって、法律の定めるところにより、その政治的中立性の保持に努めなければならないものとすること。
C 国家賠償請求権
・ 何人も、公務員の不法行為により損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は地方自治体に対して、その賠償をもとめることができるものとすること。
※ @は民主主義の原則を確認したものであり、Aは行政組織に対する国会のコントロールを定めたものである。BやCは、現行憲法の規定(国民の権利・義務の章に規定されている)を移動させてきただけのもの。

第3節 国会と内閣の関係

1 内閣総理大臣の任命
内閣総理大臣は、衆議院議員の中から、衆議院の議決で、これを指名するものとすること。
※ 国会の組織改変によって、衆議院のみが国民代表機関となったので、内閣総理大臣は当然に衆議院議員であることを要するものとしたもの。なお、つぎの2@Aの規定も、これと同趣旨の規定である。

2 国務大臣の任命
@ 衆議院議員及び与党との関係
・ 内閣総理大臣が国務大臣を任命するに当たっては、国務大臣は、すべて衆議院議員の中から選ばれなければならないものとすること。ただし、衆議院議員でない者を国務大臣に任命することについて、衆議院の承認を得た場合又は当該衆議院議員でない者が次の衆議院議員選挙に立候補する旨の宣言をした場合については、この限りでないものとすること。
・ 前項ただし書きの場合においても、衆議院議員でない国務大臣は国務大臣の総数の3分の一を超えてはならず、また、次の衆議院議員選挙に立候補する旨の宣言をした国務大臣が当該選挙で落選した場合には国務大臣を辞さなければならないとすること。
※ 第一段落のただし書と第二段落は、これまでの議論を踏まえて、議員内閣制下における政治主導をより強化したものである。
※ 尚、政府と与党との関係に関しては、第一の7に定める法律(政党法)等において、「内閣総理大臣は、政府与党の執行部の職のうち第一の7に定める法律(政党法)の定める職にある者については、これを国務大臣として任命するものとする」旨の訓示規定を置くなどして、政府・与党一体の原則を担保することも考えられる。

A 参議院議員との兼職禁止
・ 国務大臣は、参議院議員と兼ねることができないものとし、参議院議員が国務大臣に任命されたときは、参議院議員を辞職したものとみなすものとすること。

3 国会に対する内閣の連帯責任
※ 現行憲法どおり、議員内閣制の骨格はこれを維持するものとすること。

4 閣僚の議院出席・発言の権利及び義務
・ 内閣総理大臣その他の国務大臣は、衆議院に議席を有すると有しないとに関わらず、いつでも議案について発言するため各議院又はその委員会に出席することができるものとすること。また、答弁又は説明のために各議院又はその委員会から出席を求められたときは、自ら出席しなければならず、それが困難な場合には、法律の定めるところに従い、副大臣等をして出席させなければならないものとすること。
※ 議院内閣制のシステムからは、国務大臣の国会出席義務自体を削除するわけにはいかないが、「やむをえない事情(出席が困難な事情)」がある場合には、副大臣等の代理出席を条件にこれを解除することは、必ずしも議院内閣制に反するものとは考えられない。国会・内閣という権力相互間の重要事項であるから、憲法事項として規定したものである。

5 衆議院による内閣不信任決議と衆議院の解散(理由明示の必要性)
・ 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案が否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならないものとすること。
・ 内閣総理大臣は、上記の不信任決議案が可決され、又は信任の決議案が否決された場合のほか、議会民主政治の運営上、新たに国民の意思を問うことについて客観的かつ十分な理由があると認める場合には、その理由を示して、衆議院を解散することができるものとすること。
※ 第二段落では、不信任決議案可決の場合(69条解散)以外の一般的な解散(いわゆる7条解散)が認められることを明文定めるとともに、それが認められる場合の抽象的な要件を具体化したもの。同時に、その解散理由の明示も規定している。ただし、その適正さは、全て選挙で判断されるだけである。

第4節 司法裁判所

※ 憲法裁判所の設置に伴い、通常の裁判所については、「司法裁判所」と位置付けることとした。これは、「事件性」の要件(個別具体的な訴訟の提起があって初めて権限を行使すること)を前提とすることを「司法」作用の核心とする用例にならったものである。

1 最高裁判所及び下級裁判所の権能/裁判官の独立等
※ この司法裁判所の章については、次に特記する事項以外は、基本的に、現行憲法の「司法」の章の規定を引き継ぐものとする。

2 専門の特別裁判所
・ 行政事件、知的財産権その他の専門的事項に関する事件を処理するため、特別の裁判所を設けることができるものとすること。ただし、それらは終審裁判所として事件を処理することはできず、最高裁判所の下に設置されるものとすること。
※ 行政裁判所等の専門裁判所の設置を明文でみとめることとしたもの。ただし、それらはすべて最高裁判所への上訴の道が開かれていなければならず、これによって、法令解釈の統一性を担保しようとしたもの(その意味では、現行憲法下においても、法律で認められるものではあるが、それを憲法上明記したことに、本条項の意味はある)。

3 裁判官の報酬
・ すべて裁判官は、定期に相当額の報酬を受けるものとし、裁判官の独立を害することとなる報酬の減額は、これをしてはならないものとすること。
※ 批判の多い現行憲法79条・80条を実態に合わせて改めようとしたもの。

4 司法への国民参加
・ 司法への国民の参加に関しては、法律でこれを定めるものとすること。
※ 現行憲法の解釈として、陪審制などのように民間の陪審員の評決が裁判官を拘束するものとする制度は「職業裁判官による裁判」を受ける権利を侵害する、との主張があることにかんがみて、裁判員制度等が憲法上認容されることを明らかにしたもの。

5 司法裁判所の法令審査権(憲法判断の憲法裁判所への移送)
・ 司法裁判所(最高裁判所及び法律の定める下級裁判所)が、裁判において、その効力が問題となる法律、条例、命令、規則又は処分がこの憲法に違反すると認めるときは、その手続を中止して、憲法裁判所の裁判を求めなければならないものとすること。
※ 憲法裁判所の設置に伴い、憲法の最終的な有権解釈権は、最高裁判所ではなくて憲法裁判所に移管されるため、両者の間の調整を計った規定。

第5節 憲法裁判所の権能

@ 憲法適合性の裁判(抽象的・具体的規範統制)
・ 憲法裁判所は、一切の法律、条例、命令、規則又は処分がこの憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する一審にして終審の裁判所とすること。
・ 上記の憲法適合性の裁判は、次の各号に掲げるとおり、当該各号に掲げる者からの移送又は申し立てに基づいて行うものとすること。
一 [具体的規範統制] 司法裁判所において係属する事件の裁判に関して、当該司法裁判所から、法律、条例、命令、規則又は処分の憲法適合性の判断を求めるために移送されたとき。
二 [抽象的規範統制] 法律、条例、命令又は規則が制定(公布)されてから○○日以内に、当該法律等について内閣総理大臣、衆議院議員若しくは参議院議員のそれぞれ3分の一以上の議員から、又は条例について当該条例に係る地方自治体の首長若しくは議会の議員の3分の一以上の議員から、憲法適合性の裁判を求める申し立てがあったとき。

※ ドイツの憲法裁判所では、以上の二つの権限のほか、一般国民からの「憲法異議の訴え」を受理・審査する権限も規定されているが、あまりに過大な事務が憲法裁判所に持ち込まれることは、発足当初の制度設計と
しては必ずしも適切ではない。イタリアの憲法裁判所にならって、上記の2つの権限に限定したのは、そのような趣旨からである。

A 権限訴訟及び国民投票に関する権限等
・ @に規定するもののほか、憲法裁判所は、法律で定める事項に関する権限を行使することができるものとすること。
※ 「法律で定める事項」としては、たとえば、国と地方自治体あるいは地方自治体相互間の権限争いの裁定、国民投票の適法性の監督・審査などが想定される。

2 憲法裁判所の裁判官の任命等
・ 憲法裁判所は、○○名の裁判官で構成するものとし、その裁判官は、法律の定めるところにより、国会、最高裁判所及び内閣が推薦する名簿に基づいて、天皇が、内閣の助言と承認に基づいて、任命するものとすること。また、憲法裁判所の長官は、天皇が、内閣の助言と承認に基づいて、憲法裁判所の裁判官の中から、国会の同意を得て、任命するものとすること。
・ 憲法裁判所の裁判官の任期は○○年とし、再任されないものとすること。
・ 憲法裁判所の裁判官は、心身の故障のために職務を執る事ができないと決定された場合を除いては、法律の定める弾劾の手続によらなければ、罷免されないものとすること。
※ 憲法裁判所の構成は、かなり政治的な中立性が要求されるが、諸外国の憲法裁判所の構成例にならって、立法・行政・司法がそれぞれ推薦するシステムを採った。いずれにしても、全会一致で選任されるような人物が選ばれるような運用が望ましい。第二段落は、再任不可とすることによって、その独立性を強化しようとしたもの。
なお、第3段落の訴追・弾劾の手続は、参議院の権能とすることが考えられる。(本章第一節の5のA参照)

3 違憲判決の効力
・ 憲法裁判所が、1の@の第1号の移送(具体的規範統制)をうけて法律等の規定又は処分について違憲の判決をしたときは、当該移送に係る事件に関しては、何人もこの判決に拘束されるものとすること。
・ 憲法裁判所が、1の@の第2号の申し立て(抽象的規範統制)を受けて法律等の規定について違憲の判決をしたときは、その決定が公示された日の翌日から、当該法律等の規定は、その効力を失うものとすること。


第6章 財政

※ 現行憲法の「財政」の章(第8章)については、次に掲げる事項以外の事項については、基本的に現行憲法どおりとすること。

1 財政処理の基本原則
・ 国の財政は、国会の議決に基づいて、内閣がこれを処理するものとすること。
・ 国は、健全な財政を目指して、財政を適正に維持し、及び運営をしなければならないものとすること。
※ 議論となった「財政均衡」の条項については、「健全財政」を目指す旨の訓示規定として規定してみたが、さらに検討が必要か。

2 複数年度予算の編成等
・ 内閣総理大臣は、必要があると認めたときは、法律の定めるところにより、一年を超えた期間を一会計年度として予算を編成することができるものとすること。
・ 後年度負担を伴う歳出を定める予算を編成する場合には、次世代への財政負担の責任を明確にするため、法律の定めるところにより、その理由、負担の原因及び数額その他の必要な情報を開示しなければならないものとすること。後年度負担を伴う歳出を義務づける法律を制定する場合も、同様とすること。
※ 上記の「複数年度予算の編成」「後年度負担を伴い財政支出」については、その制度の具体的内容が必ずしも明らかではなく、他の条項への影響(決算制度や予算を伴う議員立法等)などを含めて、更に検討が必要か。

3 公の財産の支出又は利用の制限(現行憲法89条)の改正
・ 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のために、これを支出し、又は利用してはならないものとすること。
※ 現行憲法89条については、宗教団体への支出の部分だけを残し、いわゆる私学助成をはじめとする慈善・教育・博愛の事業に対する部分は、削除することとした。

4 決算と会計検査院
・ 内閣は、国の収入支出の決算を、その年度の終了後速やかに国会に提出し、その議決をへなければならないものとすること。
・ 国会は、内閣から決算の提出を受けた場合には、これを会計検査院の検査に付し、その検査報告を受けた上で、これを審査するものとすること。
・ 会計検査院は、国会の付属機関とすること。
※ この規定のポイントは、決算を単なる国会への報告事項ではなくて「議決事項」として国会の関与を強めている点(第一段落)と、会計検査院を国会付属機関としたこと(第3段落)にある。なお、参議院の決算の先議権については、第4章の第1節の5を参照。


第7章 地方自治

第1節 地方自治の原理

1 地方自治体の役割
・ 地方自治体は、住民の生活の基本的な場所である基礎的共同体の重要性にかんがみて、住民の福祉の増進を図ることを目的として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとすること。
※ 地方自治の目標(地方分権の究極のねらい)は、地域住民の生活に密着した行政活動の強化充実によって住民福祉の向上にあることを確認するものである。これによって、地域社会の有するわが国特有の文化や伝統の継承にも資することとなろう。

2 国と地方自治体の役割分担の原則
・ 国は、外交、防衛等の国際社会における国家としての存立にかかわる事務、司法等の全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動もしくは地方自治に関する基本的な準則に関する事務又は全国的な規模で若しくは全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業の実施その他の国が本来果たすべき役割のみを担うものとし、地方自治体は、住民に身近な行政をできるだけ幅広く担うものとすること。

※ 上記1の自治体の役割と2の国と自治体の役割分担の原則、地方分権一括法によって地方自治法に追加された規定(同法上の2)を、憲法レベルに格上げしたもの。
・ 上記の地方自治に関する基本的な準則については、法律で定めるものとすること。この法律を定めるに当たっては、地域の特性に応じた多様な組織及び権限が保障されるように配慮しなければならないものとすること。
※ 現行地方自治法は、あまりにも地方自治体の活動を細かく規定していること(例えば、地方議会の議事手続や定数、付属機関の設置など)にかんがみ、今後は、その大枠のみを定め、各自治体の裁量の幅を拡大するものとしている。ただし、連邦制を採用しようというものではないので、あくまでも国会が定める法律(例えば、「地方自治基本法」というような法律)で大枠を定める、という骨格は維持することとしている。

第二節 地方自治体の種類

・ 地方自治体は、道州及び市町村並びに自治区(仮称)とすること。
・ 道州は市町村を包括し、市町村は自治区を包括するものとすること。
・ 自治区は、法律の定める手続により設けることができる任意のものとすること。
※ 自治体の種類については、広域的な自治体である道州と、基礎的自治体である市町村の2層制を基本とした。ただ、市町村合併の結果、市町村が地域住民からやや遠い存在となることに配慮し、コミュニテイ(共同体)としての一体性を維持する観点から、「自治区(仮称)」を設けることもできるようにした。

第三節 地方自治体の権限及び機関

1 地方自治行政の基本原則(補完性の原則)
@ 市町村の事務と基本条例
・ 市町村は、基礎的な地方自治体として、地域における事務を処理するものとし、その組織及び運営の基本方針については、法律の定めるところにより、基本条令を制定するものとすること。
A 自治区の事務
・ 市町村の区域内に自治区が設けられたときは、市町村は、法律の定めるところにより、その事務を自治区に処理させるものとすること。
B 道州の事務
・ 道州は、市町村を包括する広域的な地方自治体として、地域における事務のうち、広域にわたるもの、市町村に関する連絡調整に関するもの及びその規模又は性質において市町村が処理することが適当でないと認められるものを処理するものとすること。
※ 市町村こそが基礎的自治体として、基本的に地域の事務を処理すること、道州は広域的自治体として、市町村にできないことを中心に事務処理をすることを定め、いわゆる「補完性の原則」を明らかにしたもの。なお、任意の組織である自治区が設けられたときは、基礎的自治体である市町村の事務の一部を処理するものとした。

2 地方自治体の機関
@ 道州の機関
・ 道州には、その議事機関として、住民の直接選挙により選出される議員からなる議会いを設置するものとすること。
・ 道州の長は、住民の直接選挙によって選出されるものとすること。
A 市町村及び自治区の機関
・ 市町村及び自治区の機関については、当該市町村又は自治区の基本条例で定めるものとすること。
※ 各自治体の機関の選任方法については、大統領制的な仕組み、議院内閣制的な仕組み、シテイマネージャー制的な仕組みなどさまざまであり得るから、各自治体は、その規模・特質等に応じて、それぞれの自治体の憲法ともいうべき「基本条例」において自由に定めることができるものとした。
※ しかし、道州については、憲法でもって、議会の設置とその公選、首長の公選というシステムを、一律に採用することにした。ただし、首長の公選については、道州の規模にもよるが、議院内閣制の下の首相との対比で、あまりにも強力な大統領的な仕組みが適当かどうか、更に検討が必要か。

3. 地方自治体の権能
@ 事務執行権及び条例制定権
・ 地方自治体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する機能を有し、法律の範囲内で条令を制定することができるものとすること。
A 健全財政の責務と課税自主権の保障
・ 地方自治体は、自主財源を基礎とする健全な財政を目指して、財政を適正に維持し、及び運営しなければならないものとすること。
・ 国は、地方自治体の自主財源確保に資するため、法律の定めるところにより、課税自主権を保障するものとすること。
※ @は自治体の事務執行権と条例制定権について定めるもので、現行憲法94条そのままの規定であるが、Aでは、健全財政の責務規定(第一段落)とともに、要望の強い課税自主権の保障の規定(第二段落)を定めている。ただし、課税自主権の保障の具体的なイメージについては、更に検討が必要か。


第八章 国家緊急事態及び自衛軍

※ 本章については、基本的に昨年7月24日付けの「安全保障についての要綱案」をベースにし、この間の議論をはめこむ形で修文したものである。

第一節 国家緊急事態

1 国家緊急事態の布告
 内閣総理大臣は、次に掲げる国家緊急事態が生じたと認めるときは、法律の定めるところにより、その旨を布告するものとすること。
一 防衛緊急事態 外部からの武力攻撃により国家の独立又は安全に重大な影響が生じ、又は生ずるおそれがある事態
二 治安緊急事態 テロリスト等による大規模な攻撃その他我が国又は地方自治体の存立又は自由で民主的な基本秩序に対する差し迫った危険が生じ、又は生ずるおそれがある事態
三 災害緊急事態 大規模な自然災害等により国民の生命、身体又は財産に重大な被害が生じ、又は生ずるおそれがある事態
※ 防衛緊急事態(いわゆる我が国有事=武力攻撃事態)以外の場合も含めて、非常事態を3つの類型に分けて、それぞれの定義を設けることとした。ドイツの基本法(憲法)などの規定を参考にしたものである。

2 国家緊急事態における措置
@ 国民保護の原則
  国家緊急事態において、執られる措置は、すべて国民の生命、身体及び財産の保護を旨として講ぜられるものでなければならないものとすること。
A 家緊急事態における基本的な権利・自由の制限に関する措置
・ 国家緊急事態の布告が発せられた場合には、この憲法及びこの憲法の規定に基づく法律の定めるところにより、第三章に定める基本的な権利・自由は、その布告が発せられている期間、特にこれを制限することができるものとすること。
   [制限される権利とその条件・・・略]

・ 国家緊急事態においても、この憲法の定めるところにより、基本的な権利・自由は保障されなければならず、前項の規定によりこれを制限することが余儀なくされるに至った場合にあっても、その制限に係る措置は必要最小限のものでなければならないものであること。
※ @において国家緊急事態における国民保護の大原則を定めるとともに、Aでは、例外的に基本的な権利・自由が制限されることがあり得ることを定めたものである。
B 内閣総理大臣の職務代行に関する特例措置
・ 国家緊急事態において内閣総理大臣が欠けた場合は、新たに内閣総理大臣が任命されるまでの間、あらかじめ内閣総理大臣が指名する国務大臣が、一切の職務を行うことができるものとすること。

C 国会及び国会議員に関する特例措置
・ 国家緊急事態において、国会の措置を待つ暇がないときは、内閣総理大臣は、必要な措置を講ずるため、法律で定めるべき事項に関し政令を制定することができるものとすること。ただし、その措置については、国会の事後の承認を得なければならないものとすること。
・ 上記に規定する場合のほか、国家緊急事態において、国会を開会することが困難な場合には、国会の権能は、両院合同緊急委員会が行使するものとし、両院合同緊急委員会の組織については、法律で定めるものとすること。
・ 国家緊急事態の間に国会議員の任期が満了するときは、その任期は非常事態の終了まで延長されることとし、また、国家緊急事態においては、衆議院は解散されないものとすること。
※ BCは、行政・立法の各機関が機能不全に陥った場合の規定である。いずれも、昨年7月の「安全保障についての要綱案」でも、同様の規定が設けられている。

3 国家緊急事態における民主的統制
@ 法定主義の原則
この憲法に定めるもののほか、国家緊急事態に対処するために内閣総理大臣が講ずる措置は、法律の定めるところに基づかなければならないこと。
A国家緊急事態の認定及び措置に関する国会の関与
・ 国家緊急事態の認定及びこれに対処するために講ぜられる措置の概要については、原則として、国会の事前の承認を得なければならないものとすること。
・ 前項の規定による国会の事前の承認を得ることができないときは、事後に国会の承認を得なければならないものとすること。この場合において、事後の承認が得られないときは、当該承認を得ようとした国家緊急事態に係る措置は中止されなければならないものとすること。
・ 国会が国家緊急事態の終了を議決したときも、当該国家緊急事態に係る措置は終了されなければならないものとすること。
※ 国家緊急事態の認定及び終了に関して、国会の関与を定めるもので、必要最小限かつ究極のシビリアン・コントロールを機能させるための規定である。


第二節 自衛軍

1 自衛軍の設置と武力行使の謙抑制
・ 我が国は、国家の独立及び国民の安全を守るため、内閣総理大臣の最高の指揮監督権の下に、個別的又は集団的自衛権を行使するための必要最小限度の戦力を保持する組織として、法律の定めるところにより、自衛軍を設置するものとすること。
・ 自衛軍による武力の行使は、それが究極かつ最終の手段であり、必要かつ最小限の範囲内で行わなければならないことを深く自覚しなければならないものであって、法律の定めるところによらなければならないものとすること。
※ 第一段落では、自衛軍(名称については、更に検討が必要か。)を憲法上の機関として認知するとともに、@それが内閣総理大臣の指揮下にあること、A自衛軍の有する実力は「戦力」であること、を定めている。また、第二段落では、自衛軍による武力行使の謙抑制を定めている。これは、第4章第一節「平和主義」と同趣旨の規定であり、その趣旨は、いわゆる「制限された(集団的)自衛権」のみを容認する。という立場に立つものである。

2 自衛軍の任務
・ 自衛軍は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、防衛緊急事態に対し我が国を防衛することを目的とすること。
・ 自衛軍は、上記の任務のほか、法律の定めるところにより、治安緊急事態、災害緊急事態その他の公共の秩序の維持に当たること及び国際貢献のための活動(武力の行使を伴う活動を含む。)を行うことをも任務とすること。
※ 自衛軍の任務は、@防衛緊急事態における国家防衛を任務とすることは当然であるが、同時に、A治安緊急事態や災害緊急事態においても出動できること、Bさらには、武力の行使を含む国際貢献の活動をも任務として行うことができること、を明記している。

3 軍事規律維持のための組織等
・ 自衛軍の軍事規律を維持するため、法律の定めるところにより、特別の組織の設置その他の必要な措置を講ずることができるものとすること。
・ 前項の措置については、最終的に、司法裁判所及び憲法裁判所の審査に服することが保障されるものとすること。
※ 上記のように、自衛軍を「戦力」を有する実力組織=軍隊として認めることに伴って、その軍事規律の維持のために、その違反行為に対しては、一般の裁判所とは異なる特別裁判所の管轄に服させるのことが適切であるとも考えられる。ただし、他の特別裁判所と同様に(第5章第4節の2)、最高裁判所への上訴(及び憲法裁判所の判断)を保障している。


第九章   改 正

1 憲法改正案の原案の提案権
憲法改正案の原案の提案権は、国会議員のみがこれを有するものとすること。
※ 憲法改正案の原案の提案権は、法律案の場合と同様に(第5章第一節の4)、国会議員のみが有することとした。したがって、内閣がこれを提案しようというときは、衆議院議員たる内閣総理大臣の名前で提案することとなろう。

2 憲法改正の要件
@ 憲法改正の手続
・ この憲法の改正は、次のいずれかの方法によることを要するものとすること。
一 各議院の総議員の過半数の賛成で国会が憲法改正案を可決し、法律で定めるところにより、これを国民投票に付し、その有効投票数の過半数による承認を経ること。
二 各議院の3分の2以上の賛成で、憲法改正案を可決すること。

A 改正手続の特則
・ 第一章から第四章まで及びこの章の規定(「総則」、「象徴天皇制」、「基本的な権利・自由及び責務」及び「平和主義・国際協調」並びに「改正」)の改正は、@の第一号の方法によらなければならないものとすること。
※ あらゆる場合に両議院の3分の2以上の賛成と国民投票での過半数の賛成を要求する現行憲法の改正手続を緩和し、国民投票を要しない場合も規定することとした。ただし、我が国の「国柄」ともいえる「象徴天皇制」とか基本的人権、平和主義に関する規定等については、事柄の重大性にかんがみて、国民投票を義務づけている。

3 憲法改正の公布
・ 憲法の改正について、2の@の第一号の承認を経たとき又は同第二号の可決があったときは、天皇は、国民の名で、直ちにこれを公布するものとすること。

ページ上へ/トップページへ